2024.05.09
焼き鳥好きが集結して制作された、東京カレンダー5月号の焼き鳥特集。
今回、東カレ編集部員たちが超個人的に注目する店に突撃取材を敢行し、熱量高くリコメンド!
虎ノ門・五反田・大塚・外苑前・中目黒・神田。東京都内の各所で、プロのグルメ編集者がリアルに推す店6軒をご紹介。
プライベートでは、中目黒の“鳥よし”に並んで食べるのが好き。次に気になっているのは、隠れ家的だという用賀の『山本屋』。
「『ちょうちん』とベルギービール。このマリアージュを知って私も、ひとつ大人になれた」
2014年「虎ノ門ヒルズ」がオープンして以来、日々進化し続ける街、虎ノ門。
路地裏にひっそりと佇む焼き鳥店を知ったのは、たまたま前を通ったがゆえ。調べれば、ベルギービール推しだという。俄然興味が湧き、向かってみた。
◆
土曜夜の虎ノ門は、平日とはまた違った空気感。「虎ノ門ヒルズ」は煌々と輝いているが、スーツ姿のビジネスマンは皆無で、なんだか不思議な気分。
1月末の土曜に予約を取って向かったのが、ここ『虎ノ門 焼鳥 國よし』。虎ノ門のエアポケット的な路地裏に位置し、知る人ぞ知る店だが、扉を開けると満席。
若き商社マンと思われる男性と彼女、近隣に住んでいるであろう初老の夫婦、そして、ちょっと港区っぽい匂いのするオジ様と美女。
客層は意外にバラバラだが、みんなどことなく品がある、ってのがこの店らしい。それは、まさに店主・堀 晋福(くによし)さんの人徳によるものだろう。
格好いい人の料理は、すべからく美味しいもの
『銀座バードランド』で10年修業した腕は確かだし、好んで使う地鶏は旨みが強い。
コース冒頭に出る「レバニラ」。町中華のそれとは一線を画す逸品に、期待感は膨らむばかり
「名物キミノレバニラ」。
濃厚なたまごの黄身の下に、レバーとニラが。レバニラの新しき解釈にセンスを感じる。見た目も映えるので写真に収めたい。
“焼き鳥酒場”を標榜するだけあって、横に日本酒がセットになっているのも一興。
つまみも秀逸でどんどんお酒が進む仕掛け
ささみを鳥皮で巻いて海苔に乗せた「カラスミ海苔だき身」。カラスミの適度な塩気と鶏の旨みの相乗効果たるや。
その他にも、自家製レバーパテがとにかく美味しく、ここは、どうしてもワインを欲してしまう。呑ん兵衛な大人が目を輝かせるつまみがいっぱい。
料理は「特選コース」(9,790円)より。
京味の西さんに学んだ親子丼がすごい
新橋で初めて開いた店の対面が『京味』で、その縁で料理の神様・西 健一郎さんと交流があったのだとか。
コースに+1,760円でオーダー可。
セラーには、200種類のワインに50種類のベルギービールが
その旨みを、これまた堀さんが愛するベルギービールの濃厚な味わいが受け止める。
で、出してもらったベルギービールは「ボンヴー」。“君に幸あれ”という意味らしく、なんだか粋な大人になれた気がして、帰路に就いた。
イマドキ接待に使えそうな、一新した個室にも注目
「焼き鳥で接待」っていうのはやったことがないが、ここならイメージできる。カウンター奥に2室の個室があり、接待向けコースもあるよう。
時代の流れで、いろいろなことがカジュアル化している昨今、これはありがたい。クライアント接待で提案してみようと決意。
【私が気になった超個人的な理由】
「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」取材で開眼。新橋寄りのひっそりとした雰囲気がいい。
ネットで調べると、ビストロ店主?なお洒落オーナーが。「ここはいい!」という勘が働いた。
モノ情報誌、ファッション誌を経て東カレに入社。自宅に焼き鳥グリルを持つ2児の父。過去に四谷の焼き鳥店でバイトしたことも。
「大崎にある会社から歩いて10分でありつける、ご褒美焼き鳥こそ私の活力」
たまっていた仕事が片付いた夜。冷たいビールともくもくの焼き鳥で自分をねぎらい続けてここまできた。
しかし、私も気がつけばもう47歳。正真正銘の“オジサン”になったいま、ゴールデンコンビを一新したい。
◆
大崎から五反田は近い。ランチに行くのも、校了(雑誌制作の最終日)明け、編集部で飲みに行くのも大概五反田。
いつも“安くて美味しい”を求めて行くのだが、今回は五反田でラグジュアリーを知ることに。
『とり口』は五反田駅西口から徒歩5分程度、繁華街から少し離れたエリアにある。ビルの1階で、木製扉に控えめに記された店名が、上質なオーラを放っている。
店内は仄暗く、ダウンライトが照らすカッコ型(]←コレ)のロングカウンターが艶っぽい。
いかにもデート向きだと思いきや、意外にも同世代の男性同士が多く、大人らしい静かな喧騒が心地良い。
ネギの食感が心地いい塩つくねが絶品!
頼んだのは「極コース」。「地鶏のたたき」から始まって、串は野菜を含めて全9本。
まさかのポーチドエッグ&トーストに口の中が迷宮入り!
合間に一品料理が挟まれて、最後に〆の食事という流れ。
〆は痺れる旨さの濃厚担々麺
〆は「親子丼」「そぼろご飯」「担々麺」を用意。
濃厚なごまのスープを絡み取るやや細麺を使用した担々麺は、山椒のインパクト大。焼き鳥の余韻を奇麗に断ち切る美味しさ。
すべて「極コース」(7,150円)から。
ソムリエが提案してくれるナチュラルワインがドンピシャ
このコースを支えるのはソムリエがおすすめしてくれるナチュラルワインだ。
ジューシーな焼き鳥と軽やかなワインの相性は1ヶ月の疲れを癒やしてくれること間違いなし。と言い切らせてもらう。
【私が気になった超個人的な理由】
『とり口』は知っていたが「いつでも行ける」とスルーしていた。当企画にぴったりだと伺うことに。
2月号にて「さらば青春の光」の森田哲矢さんが、デートで行ったとのことでムードを確かめに。
横浜号では『里葉亭』や『1000』を取材し、今号では『鳥よし』や『鳥しき』一門の店を取材。焼き鳥の名店を全速力で駆け抜けている。
暗がりに映えるカウンターで、極上の焼き鳥とワインのマリアージュを楽しむ
なくてもいいけど、あったらとても嬉しいものって?そう、それがサプライズ。
焼き鳥店におけるそれは、ズバリ空間。評判のお洒落空間を体験しに、大塚の『やきとり 結火』へと向かった。
◆
大塚に降り立ったのは、コロナ前のことで、当時は『ぼんご』もまだ行列がそこまでじゃなかった(いまや数時間待ち)。などと考えながら駅を出ると、徒歩15秒で該当のビルである。
8階で降りて店に入ると、驚きの光景に胸が高鳴った。一面ガラス張りの空間に、5mはあろうカウンターが鎮座。
隈 研吾さんの薫陶を受けた建築家・白浜 誠さんが手掛けた艶やかな空間に、Yチェアがズラッと並ぶ。
贅沢なフレンチのそれか、イノベーティブかって、そんな空間で焼き鳥を食べるのだからサプライズの極みだ。
「ぼんじり」「つくね」「振袖」が個人的ベスト3!
こちらで扱うのが「黒さつま鶏」。弾力があり、旨みの余韻が長く、特に脂を感じる串に心を打たれた。
焼き鳥の特性に合わせたワインセレクション
また、目黒の『やきとり阿部』の姉妹店ゆえ、ワインも充実。この日も串に合わせて数杯ほどいただく。
「ワインは国にこだわらず、酸が立っているものを選んでいます」と大将の小山翔大さん。
名物の「手羽」とソーヴィニヨンブランが最高!
骨を抜いてネギを刺した名物の「手羽」には、ロワールのソーヴィニヨンブランで。
柚子こしょうの華やかさと桃や青りんごのような味わいが最高にマッチ!
一風変わったTKGなど〆の一品も見逃せない
〆は追加するスタイル。「鶏そば(塩・醤油)」(700円)は濃厚な味わい。
上質な空間と、串とワイン。誰かを連れてくるのに、これ以上の選択はない。
【私が気になった超個人的な理由】
空間が超格好良い、そんな焼き鳥店って多くない。こちらの天空のカウンターに目がくぎ付けに!
重い腰をあげ「ワインエキスパート」取得のため学校へ入学。可能ならワインの充実した店に。
筋トレをこよなく愛す34歳。最近ハマっているおやつはサバの水煮缶。先日、数年ぶりに高級時計を購入したことで深い時計沼に……。
かつての職場の目と鼻の先にあり、プライベートから接待まで足しげく通った思い出の店。
東京を代表する焼き鳥店としてますます勢いにのる、『焼鳥今井』の最新事情に迫った!
◆
東カレに入る前、神宮前で働いていた当時の行きつけは間違いなく『焼鳥今井』だった。
今井充史さんは、あの『銀座バードランド』などで修業を積んで独立。千駄木を経て2016年に同地へ移転を果たした。
黒を基調としたモノトーン空間で、ワイン片手に懐かしさに浸る夜
シックな店内から漏れる美味しそうな香りに引き寄せられ、オープン当初から通うようになった私。無茶な当日予約に快く対応いただいたこともあった……。
それから転職やコロナ禍が重なり、足が遠のいてしまっていたが、先日約5年ぶりに訪れると、さらなる進化を遂げていた同店。
絶妙なアレンジの効いた串に「天城軍鶏」の旨みが凝縮!
まず変わったのは、一品料理を減らし、焼き鳥・野菜焼きをより強化したこと。
白子などを用いた「もつミックス」の濃厚な旨みには感激!
焦げを恐れずギリギリまで香ばしく焼く「皮」。
全国から取り寄せる旬野菜の焼き物としての完成度に唸る
吉田裕一さんによる山梨のドメーヌ・パパプルで、ブドウと一緒に作られるかぶやにんじんなど、自然農法にこだわった旬の野菜を全国から仕入れている。
香ばしさの中に本来の甘みをとじ込めた「吉田さんのかぶ」。
水分を逃さず焼き、噛めば旨みのジュースがあふれる「長谷川さんのマッシュルーム」。
料理はすべてコース(8,800円)より。
山梨生まれのナチュラルワインは、つい杯を重ねてしまう
今井さんが柔らかく健やかな味わいに惚れ込んだ、山梨のナチュラルワインをメインに扱う。
右からパパプル「Linda」、ドメーヌ・ポンコツ「まどぎわ」、共栄堂「Y22 HR RZ」、ドメーヌ・オヤマダ「BOW! ルージュ2022」。
“今井イズム”を受け継ぐスタッフが店を切り盛り!
そして、店の営業は焼き場を仕切る料理長・野島祐基さんをはじめ、スタッフにバトンタッチ。今井さんは隣の『とんかつ七井戸』を含めた、運営の舵取りに専念している。
「後進を育てる」という移転当初の思いを形にした、『焼鳥今井』のこれからにも期待したい。
【私が気になった超個人的な理由】
コロナ禍にテイクアウトで何度か利用させてもらったが、職場が遠くなって久々の訪問に。
グルメ編集者として、店主・今井さんにこの5年間で変わったことなどをインタビューした。
旅行が趣味の最年少編集部員。週末に思いつきで弾丸1泊旅をすることも。旅先でご当地ビールの飲み比べをするのがルーティン。
許された者だけが知る暗証番号が、ドアを開ける瞬間のドキドキ感を加速させる
編集部員となって半年、東カレ偏差値を上げるべく隠れ家が気になっている。
せっかくなら大好きな焼き鳥でお洒落な店が良い。そんな期待にぴったりの店があると聞き、いざ中目黒へ。
◆
仕事終わりの金曜19時。少しの緊張と期待に胸を膨らませ、中目黒へ。駅から徒歩5分、雑居ビルの2階に『熊の焼鳥 中目黒』はある。
看板はなく熊のマークのみが扉に描かれ、外観からはほとんど中をうかがえない。暗証番号を入力し、恐る恐る中に入るとコの字型のカウンターが洒脱な空間が広がる。
完璧な火入れと炭の香ばしさに、1本目から心掴まれる!
席に着くと、1本目から焼き鳥のレベルの高さに驚く。聞けば、大阪で人気の会員制焼き鳥の支店だというから納得だ。
中目黒店は「会員優先制」で一般でも予約を取ることができる。コース1種類のみの展開だが、6,600円と手が届きやすい価格帯。
ここでは脂が滴る際に出る煙を纏わせる“燻し焼き”で、香り高くジューシーに焼き上げる。
焼き台を囲い、できる限りコンパクトにしたのは、煙の匂いが服につかないようにというお店の配慮。ほんの少しの勇気で、唯一無二の食体験とおもてなしを知ることができる。
会員になれば「ももフィレのたたき」も!
会員になるには、一度店舗を訪れた際に登録する必要がある。
会員限定メニューの「ももフィレのたたき」(990円)は飼育からすべてを手掛ける独自の鶏(通称:究極鳥)を使用。甘みのある肉の味をダイレクトに味わえる。
ねっとり濃密なキンカンのたまごかけご飯は必食!
コースの〆であるキンカンのTKGは、フォークでたまごを割ってご飯に回しかけていただく。
味の濃いキンカンに負けないよう開発したオリジナル醤油を使用。
オリジナルグラスで飲む特別なハイボールが上質!
店のマスコット「くーま君」が描かれたグラスで飲むのは「完璧なハイボール」825円。
グレンモーレンジィのハイボールに柑橘のミストを振って仕上げる。
隠れ家の真価を経験し、またひとつへ大人への階段を登ったような気がした。
【私が気になった超個人的な理由】
話題の店にはだいたい行ってるグルメな先輩。彼女が言うなら間違いないと期待値が上がる。
東カレではよく取材する隠れ家。未体験では良い記事は作れぬと、勇気を出して向かってみた。
月2~3回は焼き鳥店に足を運ぶ焼き鳥好き。好きな部位は「砂ぎも」や「やげん軟骨」などコリコリ系。薬味は七味より柚子胡椒派。
「『ひとりでカウンターに座る』20代の私は想像もしなかった大人飲みが板についてきた」
私が神保町の出版社に入社したのは20数年前。その頃は働きづめで、会社と家を往復する毎日。そんな姿を見かねてか、ある日上司が「近場だし神田の焼き鳥に行くか?」と誘ってくれた。
連れられるまま訪れた神田は、線路の高架下に小さな店が連なり、各店から楽しそうな声が漏れ聞こえる酒飲み天国だった。
そして上司の馴染みの店だと訪れた店も、THE神田という様相で隣の人と肩が触れるほど狭いカウンターだけの店だった。
だがそこで、ほかの常連や大将と談笑する上司を見て、「なんか大人って楽しそう」と思ったのを覚えている。それから神田は私の好きな街になった。
『鳥のかけ橋』は、そのとき感じた「大人の格好良さ」を思い出させてくれる店だ。
薪で焼く?燻製香がクセになる焼き鳥が絶品!
決して広くはないが、磨き上げられたカウンターで、大将こだわりのジューシーな水郷地鶏の焼き鳥をさかなに、ひとり日本酒を飲む。
「私も大人になったな」と思わず苦笑い。
私が虜になったのが薪で焼いた「ソリーキ」(480円)だ。ふんわりとジューシーなうえ、口に含むと薪の良い香りが鼻腔をくすぐる。
「通常は備長炭を使いますが、ジューシーな質感を出したい部位にはナラの木で焼きます。薪で焼くと薪の水分の効果でしっとりと焼きあがるし、香りがついていい味わいになるんです」
つくねを合鴨で?串のクセが強い!
「焼き鳥はシンプルな食べ物なので、素材や調理で大きく味が変化します。希少部位なども多く扱っているのでいろいろ試して」と高橋さん。
「つくね」500円。岩手県産の合鴨を荒く挽き肉肉しさを表現。
「ちょうちん」400円。3個のキンカンがついた様は圧巻。
「ダキミ」(400円)は、自家製のカラスミの上に、ウニソースが!
「皮」(500円)は、鴨の皮を2時間以上ボイルしてから焼き上げることで鰻のようなふわトロ食感に仕上げた一品。
口直しの逸品も気が効いてる!
「黒麻婆豆腐」(880円)も人気の一品。黒色の正体は、竹炭。竹炭が入ることで、さっぱりとした口当たりになる上、インパクトも絶大!
青唐辛子やナンプラーなどが入ることで少しエスニックな風味も漂いクセになる味わい!
目利きの店主が厳選した日本酒が秀逸!
なんとも居心地が良い店なのだ。
【私が気になった超個人的な理由】
神田は、かつての勤務先から近くよく通った街。その街で出合った店なので、興味を持った。
以前訪れた際に品数も多く、焼き鳥好きの血が騒いだ。そのうち再訪したいと考えていた。
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