男女隔てなく仲が良いがゆえに、どこか掴みどころのないムードを放つ悠だが、浮いた話がないわけではない。
今夜は広告代理店に勤める麗奈と3度目のデートだ。
麗奈は積極的なタイプなのか、悠がこのあたりに住んでいると伝えると、彼女の方から代官山でのデートを提案してきたのだった。
「悠くんのおすすめの店に行ってみたい」
そんな麗奈からのリクエストで、今夜は『BISTRO FAVORI』を予約している。
色鮮やかな食材を使って美しいプレゼンテーションをしてくれる、代官山らしいお洒落な一軒家のビストロだ。
女性からの評判がいいのはもちろん、テラス席もあり犬連れもOK。仕事場にしているシェアラウンジから徒歩30秒とあり、悠は何度か友人とこの店を訪れていた。
約束の時間を迎え、悠は麗奈とテーブルに着く。
ディナーは目にも楽しいたっぷり野菜のアミューズに始まり、四季折々の食材が並び、ほどよくカジュアルな雰囲気の中で悠と麗奈の会話は弾んだ。
「ねぇ悠くんって…私のこと、どう思ってる?」
「可愛いと思ってるよ。一緒にいて楽しいし」
食後のコーヒーのタイミングで突然出た麗奈の質問に、悠は臆することなくさらりと答える。
「嬉しいな。じゃあ、恋愛対象として見てくれてるってこと?」
「それは俺のセリフだよ。10個も年上なんだから」
「わたしは最初から恋愛対象として見てるよ。悠くんのこと」
仕事仲間との飲み会に居合わせた麗奈と、ふたりで会うのは3度目。確かに、そろそろ関係性が気になる頃だろう。
「もう少し飲みながら、ゆっくりしたい」という麗奈を連れて、悠は代官山T-SITE 2階の『Anjin』に向かった。
仕事場としてシェアラウンジへは来ていたが、夜に『Anjin』に来るのは久しぶりだ。
かつての深夜営業のイメージがあったが、今は22時クローズだと告げられてしまった。
「ラストオーダーまで時間もないし、今日は帰ろうか?駅まで送るよ」
「せっかくの土曜日、もう少し楽しみたいな。そうだ!一緒に映画観ようよ」
「じゃあ…飲み物でも買ってうちに行くか」
断る理由も見つからず部屋へ招待してみると、麗奈は嬉しそうな笑顔でうなずいた。
飲み物を買って目黒川のほとりをゆっくりと散歩し、部屋に着いたのは22時過ぎ。
それから準備をして映画を観て…いつしか終電の時間を迎えていたことに悠は気がつく。
タクシーを呼ぼうか、と声をかけようとしたが、麗奈は映画のエンドロールが流れても画面から目を離さず、帰り支度をする様子はなさそうだ。
「麗奈ちゃん。もう一本、映画観る?…それとも、休む?」
ここにいても良い、と許可を得たように感じたのか、麗奈は安堵の笑みを浮かべる。
「ありがとう。少ししたら、休もうかな」
悠は麗奈に部屋着を貸し、着替えたふたりはほどなくしてベッドへと向かった。
広いベッドにそれぞれ横になり、今日のディナーの感想など少しだけ話をして…甘えてきた麗奈の期待に、悠は応えたのだった。
この記事へのコメント
最後まで読んだけどよく分からんかった。