なぜ、成功の切符を手にした希少な超エリート集団ほど、やる気を失ってしまうのか。
理由は色々考えられますが、なにはともあれ、とりあえずは30歳になるまで通勤電車、上司のパワハラ、残業などひっくるめて「仕事がおもしろくない」の一言に尽きるのではないでしょうか。
現場で学び、悩み、熱くなる経験が「仕事っておもしろい!」の扉を開けるのに、その経験をもてなかった、「やった!」と小躍りする経験ができなかった、と私は考えます。
本来、若さとは好奇心であり無謀さなのに、日本の多くの若者には野望もなければ野心もない。乾涸(ひから)びた「普通」と「無難」を合言葉に、慣れ親しんだ領域内にとどまり「安心」を手に入れているのが平成以降の多くの若者です。
この原因は「有意味感」の欠損に尽きる、と私はあえて断言します。
「有意味感」は「ストレスや困難は自分への挑戦で、立ち向かうのに意味がある」と思える感覚で、「意味がある」という感覚は携わっている仕事などに向けられることもあれば、自分の存在意義そのものに向けられることもあります。
有意味感の生成に大きな影響を及ぼすのが、他者からの「あなたは大切な人」というメッセージです。具体的には「自分を認めてくれる人がいる」「自分はここで能力を発揮できている」「自分は他者の役に立っている」という経験です。
つまり、「自分が存在する意味=自分への自信・自分の仕事への誇り」を持てない社会構造にこそ原因がある、と思っています。
若者だけではありません。50歳を過ぎた会社員は周りから、「給料は高いのに使えない」と陰口を叩かれ、20代の若者は「美化されすぎたZ世代のイメージ」に気後れし、30代はどうせ頑張っても「40、50代になったら会社に捨てられる」とやる気をなくし、40代は社会のご都合で「就職氷河期世代」にさせられ無間地獄を生かされている。
「自分が存在する意味=自分への自信・自分の仕事への誇り」を持てない日本の社会構造の問題こそが、この本のタイトル『働かないニッポン』の真意です。
トルストイは「働き方と愛し方を知る者は、豊かな人生を送ることができる」と断言し、フロイトは「愛と仕事…仕事と愛。それが人生のすべてだ」という名言を残し、ニーチェは「職業は背骨だ」と説いている。
いずれも働くことが生きることの源であることを説いた名言ですが、ニーチェの職業(=profession)という言葉には「私が私でいるための仕事」が込められていると解釈します。
2. 脱「働かないニッポン」のためにできること
では、「働かないニッポン」を脱却するためにはどうしたらよいのでしょうか。
つまり、どのように働けば有意味感を強められるのか。
どのように働けば「私はここにいる!」と思えるのか。
どのように他者と関われば、「私はここにいていいんだ!」と他者を勇気づけられるのか。
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本書ではそれらのヒントが6つ紹介されています。そのうち、①普通を疑う、②仕事にやりがいを求めない、の2つを紹介します。
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