2024.04.01
オトナの5分読書 Vol.20①「普通」を疑う
「自分を認めてほしい」という欲求は誰にでもありますが、どんなに「すごい!」「さすが!」と称賛されても、それが「本当の自分」じゃなければちっともうれしくありません。
では、本当の自分って何なのか?ってことになるわけですが、わかりそうでわからない。
自己は「玉ねぎの芯」のようなものだと考えるといいかもしれません。
小さい頃は親や学校の先生の期待に応えるように頑張り、学生になってからは仲間外れにされないように求められるキャラを演じ、オトナになってからは、いったん乗ったレールから外れないように、無難な働き方、普通の生き方に安心を求めるようになっていくのです。それに拍車がかかるのが、誰が決めたかわからない「正解」があふれる今の日本社会です。
若い世代は「普通」を基準に生きています。むろんそれは必ずしも悪いことではありません。社会のシステムに適応して無難に生きるほうが安全に暮らせる可能性があるからです。
でも、それが自分の可能性を制限していることや、生きづらさになっていることに気づいていません。
そこで「普通を疑う」です。
当たり前のように毎日ぎゅうぎゅうの満員電車で会社に行くのはおかしい、大学を出てすぐ就職するのはおかしい、有給休暇を全部消化しないのはおかしい…。
そうやって毎日の当たり前を「これっておかしくない?」と意識し、その「おかしい」を言葉にしてみてください。ときには、「自分、これでいいのか?」と自分のことを疑ってください。
900人以上のビジネスパーソンをインタビューしてわかったのは、「人は自分の考えや意見、自分が決めたことを話す時、いい目をする」です。
私が「え!そうなんですか?」と興味を示し、「へ~、それでそれで?」と突っ込めば突っ込むほど目力が増します。
そして、大抵インタビュー翌日に「サンクスメール」が届きます。
「自分のやるべきことがクリアになりました」「もう一踏ん張りします」という人もいれば「大学院を受験することにしました」という人もいます。
人に「おかしい」を話すと、息苦しさになっていた皮がむけるのです。
玉ねぎの皮を一枚一枚むいていくプロセスは、自分らしさを手に入れることであり、成熟した大人になる作業です。それは同時に「自分の生きざまに責任を持つ覚悟」です。
②仕事にやりがいを求めない
「自分に合っていない」「やりがいを感じられない」と会社を辞める若者がいます。「やりたいことだけやる」「やりがいが感じられる仕事だけする」という言葉に魅了されるおじさん・おばさんもいます。
しかし、いくつになろうとも、やりがいがあるとかないとか、自分に合っているとかないとかに関係なく「やらなくてはならない」仕事で日常は回っています。
以前、ある企業の社長さんが「就活中の娘に『お父さんに社長業って合っているの?』と聞かれて戸惑った」とぼやいていたことがありました。確かに改めて問われると、自分に合う仕事が何かさえわからない。
仕事とは不思議なもので、自分にベクトルを向けるより「誰か」に向けた方が案外うまくいきます。仕事のチャンスをくれた人とか、自分の仕事を待ってくれている人とか。
ただただ「誰かの役に立てばいいなぁ」「誰かが笑顔になれがいいなぁ」と、自分の仕事の先にいる「誰か」をイメージしながら仕事をしていると、自分の考え方とかがだんだんわかってきて、ちょっと成長したかも、玉ねぎの皮がむけているかも、と感じることもあります。
大切なのはいったん仕事を引き受けたら、きちんとした仕事をすることです。やりがいを求めたり自分に合っている仕事を見つけようとするより、よほど簡単です。
今回紹介した、『働かないニッポン』河合薫著(日本経済新聞出版) のすごいところは下記に集約される。
①若者だけではなく、すべての世代が「仕事に対する意欲が低下」している現状を突きつけられハッとする。
②仕事への熱意が低下している日本の現状を、個人の問題ではなく社会の環境の問題であるという視点から分析しているのが興味深い。
③深刻な問題を抱えているニッポンだが、少し視点を変えるだけで「働かないニッポン」の現状を打破することができるという希望が持てる。
【著者】 河合 薫(かわい・かおる)
千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。
その後、東京大学大学院医学系研究科博士課程に進学し、現在は「人の働き方は環境がつくる」をテーマに学術研究にかかわるとともに講演や執筆活動を行う。
▶NEXT:4月15日 月曜更新予定
『子どもの脳の育て方 AI時代を生き抜く力』を紹介します
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