麻布には麻布台ヒルズ。銀座には、GINZA SIX。丸の内には、KITTE丸の内…。
東京を彩る様々な街は、それぞれその街を象徴する場所がある。
洗練されたビルや流行の店、心癒やされる憩いの場から生み出される、街の魅力。
これは、そんな街に集う大人の男女のストーリー。
▶前回:麻布台ヒルズで出会った男から、バレンタインのお誘い。なのに連絡が途絶え…
Vol.2 『繋がる空、春の風/KITTE丸の内』美香(26歳)
バレンタインデー翌日の夜。
美香が可憐の家からほろ酔いで帰宅したのは、深夜0時を回る頃だった。
近所に気の合う同僚がいるというのは、つくづくいいものだ。鼻歌混じりの上機嫌で、たった今手に入れたばかりの嬉しいプレゼントを机の上に置き、まじまじと見つめる。
「やっぱり可愛い。可憐ってこういうの見つけるの上手いな」
机に置いたのは、花びらをかたどったチョコレートだ。
椿の濃紅、薄紅、白そして黄色の花びらが繊細に折り重なっており、麻布台ヒルズの洋菓子店で手に入れることができるらしい。
可憐がお酒の肴として出してくれたものだが、余った分を「美香、よかったら持って帰って」と言われ、持ち帰ったのだった。
けれど、美しいチョコを前にして、美香はにわかに顔を曇らせる。
― このチョコレートは、本当は…。
可憐は本当は昨日…2月14日に、誰かにこのチョコレートを渡す予定だったらしい。
多くは語らなかったが、「もう彼に会うつもりはない」とだけ言っていた。
「結果、心から喜んでくれる人に渡せてよかった」と笑う可憐に、美香は顔をほころばせたが、その心中は複雑だった。
その理由は、可憐がどうやら失恋したから──ではない。
可憐の恋がうまくいっていない様子を聞いて、どこかほっとしている自分に気づいてしまったからだ。
― 可憐の気持ちを無下にした男のことは、憎い。でも…。
親友の幸せを願う気持ちは、もちろんある。
でも、まだ20代半ばなのだ。一緒に恋愛で悩み、恋バナではしゃぐくらいの状況が一番楽しい、と美香は思う。
― そろそろ将来設計が必要だって、わかってる。でも東京の街には、モラトリアムを楽しみたいと思わせる魅力がある…。
モヤモヤとした気持ちを払拭しようと上着を脱ぎ、ついでにポケットから出したスマホを開く。
着信履歴が残っていることに気づいた美香は、眉をひそめた。
この記事へのコメント
いやその前に知らない。 京大・阪大や関関同立なら関東の人でもよく知ってるけど甲南女子言われても.... 関西ではどんな評価なのかさえ知らん。学費高くて親が裕福じゃないと行けないのかな、検索したら偏差値40〜になってた。