
~自分が飲みたい日本酒で世界に挑戦し、日本酒業界に革命を起こしたい~
令和のニューリーダーたちへ
販売は自社サイトでの直販のみ。毎週水曜の発売日には、数千人がアクセスし、受付開始から5分で完売する。それが2019年に誕生した高級日本酒「TAKANOME」だ。
TAKANOMEを手掛けるのは、20代の平野晟也氏。平野氏が大学中退後に設立した株式会社Forbulは、日本酒ベンチャーを名乗り、現在はグローバルで事業展開を進めている。
もともと日本酒業界とは縁もゆかりもなかったが、たまたま飲んだ日本酒に感動し、その可能性に気づく。そこから単身で歴史ある業界に乗り込み、日本酒造りを始める。
日本酒という武器を手に世界へ挑戦しようという若き起業家は、日本酒の未来をどう捉えているのか。
金丸:本日は日本酒ベンチャーのForbulの平野晟也さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
平野:こちらこそお招きいただき光栄です。
金丸:今日の対談の舞台は神楽坂の『一宇』です。大将の濱野紘一さんはミシュランで三ツ星を獲得した『銀座小十』や、二ツ星の熊本『鮨 仙八』などで修業されてきた方です。今日は平野さんが造っている日本酒「TAKANOME」とともに、お鮨を味わいたいと思います。
平野:料理もとても楽しみです。
金丸:さて、TAKANOMEは一般の流通には乗せず、ネットで注文を受けて発送するという形をとっていますね。
平野:無濾過生原酒という繊細なお酒なので、一般的な流通ルートだと品質が劣化する可能性があります。それにECサイトで直接販売すると、お客様の声が入ってきやすいので。
金丸:毎週水曜日に注文を受け付けて、販売開始から5分で完売するほどの人気ですよね。私も入手するのにひと苦労でした(笑)。
平野:一般の酒蔵さんは12月から4月にかけて一気にお酒を造り、年間を通して販売する冬季醸造が多いのですが、うちの酒蔵は小さなタンクで毎週のように造っています。これだと、造ったあとにすぐ販売できます。
金丸:TAKANOMEは、どこの酒蔵で造っているのですか?
平野:山口県周南市にある「はつもみぢ」という酒蔵さんにお願いしています。創業200年以上の由緒ある酒蔵で、徳山駅から徒歩10分くらいの街中にあります。
金丸:酒蔵は山奥にあることも多いのに、珍しい立地ですね。
平野:今は日本酒全体の売上が伸び悩んでいるので、山奥よりも街中にあるほうが、いろいろな仕掛けができてメリットが大きいと感じています。珍しいといえば、はつもみぢさんは女性の比率が高くて、製造に携わっている5人のうち3人が女性なんです。
金丸:それは面白いですね。平野さんがこれほど若いことにも驚きましたけど、TAKANOMEを最初に見た時、「これは日本酒業界以外の人がやっているな」とピンと来たんです。業界にどっぷり浸かっていると、こういう発想は出てきません。今日は平野さんの生い立ちから、日本酒を造ることになった理由や日本酒業界の未来まで、じっくり伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いします。