変わりたい。
幸せになりたい。
自分の好きな、自分になりたい。
女性なら誰しもが、そんな情熱を心に秘めているはず。
もしも、そんな“新しい理想の自分”に、たった4ヶ月で生まれ変われるとしたら…!?
単調な仕事に飽きてきているうえに、大失恋し悶々とした日々を過ごす優希(29)。
ある日、そんな毎日をたった4ヶ月で変える方法を知り…。
女の人生をリスタートする、リスキリング時代の新しいチャレンジとは?
彼と結婚するはずだったのに…
「おめでとう!」
「おめでとうございます!」
「2人が付き合ってるの、全然気づかなかったよ〜」
「幸せになってね」
月曜の朝礼で、同僚たちが口々にお祝いの言葉を発している。
完全な祝福モードのオフィスで、優希は頭の中が真っ白になりながらも、かろうじて大きな拍手を送っていた。
みんなの前に立ち、祝福の言葉を全身に浴びているのは、新入社員の由梨と…元カレの瞬だ。
ピッタリと寄り添い、すでにおしどり夫婦の風格が漂っている2人は、なんと付き合って3ヶ月のスピード婚なのだという。
― あれ?3ヶ月前は瞬、まだ私と付き合ってた…よね?これって、二股かけられてたってこと?
絵に描いたような幸福に包まれる2人に拍手を送りながら、優希は自分に問いかける。
何度も結婚の話を持ち掛けても煮え切らず、3年も付き合った挙げ句の果てに「お前と結婚する気はない」といって一方的に別れを告げてきた元カレ。
その元カレが、今、目の前で、幸せそうな微笑みを浮かべながら結婚の報告をしている。
その事実は優希にとってあまりにもショッキングで、とてもじゃないけれど「おめでとう」の言葉は、言えそうになかった。
瞬と由梨は、しばらくの間はこのまま同じオフィスで仕事を続けるのだという。
― そんなの、つらすぎるよ。このままここにはいられないし、2人の幸せなんて喜べない…。
メガバンクといえども、支店という職場環境は、狭い。
一般職で常にオフィスにいる優希は、必然的に瞬とも由梨ともやりとりをすることになる。
それは、瞬とヨリを戻すことに一縷の望みをかけていた優希にとっては、あまりにも残酷すぎる環境だった。
― これはもう、ここの仕事を辞めて転職するしかないのかも。
優希は、惨めだったし、人の幸せを祝えない自分のことを、ますます嫌いになりそうだった。