予約が取れなくなるレストラン 【新時代の若手】編 Vol.4

洗練を加えたピュアな料理。実力に裏打ちされたみずみずしい生命の味

『エル・ブリ』、その先にある世界のモードが見えてくる。

フランス、スペインで修業後『日本r調理 龍吟』を経て、’80年~’11年2月まで東京『レストラン サンパウ』のスーシェフ。

今春、スペインの『エル・ブリ』が閉店した。最後の晩餐時には続々訪れるセレブのヘリコプターで渋滞ができたという。約10年間に渡ってオートキュイジーヌの最新モードを提供し続けてきた3つ星レストランに相応しい、華やかな幕引きだったようだ。

泡状ソースのエスプーマ、液体窒素やアルギン酸を用いたアヴァンギャルドな品々。スペイン料理に限らず、フレンチ、イタリアン、果ては日本料理にまで影響を与えた『エル・ブリ』モードのその先を世界中が見守っている。次のスターは誰? どんなスタイルで驚かせてくれるの? 状況は未だ混沌としているが、本多誠一オーナーシェフが示す方向に未来がほの見えているような気がする。

言葉で表現すれば、洗練を加えたピュアな料理。例えば、冷たい前菜「ブラッドオレンジとアボカドのクリーム」は一瞬、ブルンとした食感が「すわエル・ブリ式化学薬品か」と錯覚するもさにあらず。ブラッドオレンジジュースのベースに葛で付けたとろみであり、緑のプチプチ食感はスポイト注入の合成品ではなく、スナップエンドウの実をそのまま使用したもの。

また、ナメタカレイは骨ごと筒切りにしてゼラチン質を残し、筋の多い豚肩肉は低温で1時間ほどかけて焼くことでジューシーに仕上げている。素材を自然な形で使いつつ、手はきちんとかけるという仕事によってみずみずしい生命の味が生み出される。

フランスの三ツ星『ジョルジュ・ブラン』をはじめ、重厚感のある料理で基礎を、『レストラン サンパウ』『日本料理 龍吟』でモードの洗礼を受けてきた料理人だから踏み出せる。新しい地平は歴史の積み重ねから開けていく。

右.ロ秋田県産豚肩ロース肉のロースト 甘口シェリーのソース。以下、料理はすべて¥11,000ディナーコースより 左.ホタテのブニュエロス

右.ブラッドオレンジとアボカドのクリーム カピージャ デル フライレ 左.ナメタカレイの炭火焼 新タマネギのピュレとともに

右.繊細な盛り付けが冴える 左.通りから見えるキッチン

右.個室料¥6,000~ 左.ワインはスペイン産を中心に約120種類。ボトル¥3,000~

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