SPECIAL TALK Vol.107

~未曽有の事態に直面して生まれた医療の新しいカタチ~


両親とも医師の家庭。自然と医学の道を選んだ


金丸:早速ですが、ご出身はどちらですか?

菊池:静岡県浜松市です。

金丸:私は鹿児島育ちですが、どちらも日本有数の“うなぎ”の産地ですね。

菊池:うなぎの焼き方は、関東焼きと関西焼きがちょうど浜名湖で分かれるそうです。

金丸:関東と関西がせめぎ合っているんですね。菊池さんはどちらがお好きですか?

菊池:僕は関西焼きが好きです。

金丸:蒸さずに焼く派なんですね。ちなみに高校の同級生は、静岡県内に残る人と県外に出る人ではどちらが多かったのですか?

菊池:県外に出る人ですね。うなぎの焼き方ではないですが、大学の進学先も東京と関西と半々くらいでした。でも僕の周りでは、家業を継ぐために地元に戻ってくる人が多かったです。

金丸:菊池さんは、お医者さん一家なのですか?

菊池:はい。両親が医師で、親戚にも医師が多くて。

金丸:やっぱり。何となくそんな雰囲気が(笑)。

菊池:そうですか?ちなみに妹がひとりいますが、彼女は歯科に進みました。

金丸:そういう環境だと当然、「医者になるよな」という圧力がかなりあったのでは?

菊池:プレッシャーは大きかったですね。

金丸:私の鹿児島の友達も、開業医の息子はみんなプレッシャーをかけられていました。都市部より地方のほうがそういう圧力が強いように感じます。

菊池:確かに東京のほうが、さまざまな進路を選んでいる人が多いように思います。

金丸:ご両親は開業医ですか?

菊池:父は産婦人科の勤務医で、母は祖父から病院を継いだ整形外科医です。

金丸:やっぱり菊池さんは、子どもの頃から勉強ができたんでしょうね。

菊池:小中一貫校に通っていて、割と真面目に勉強していました。でも、中学の最後の方でサボってしまって(笑)。

金丸:とはいえ、医学部に進学されてますよね。

菊池:高校2年の終わりの模試の結果が、本当にひどくて。これはまずいと一念発起して、なんとか合格できました。

金丸:ご両親のプレッシャーもあったでしょうが、医学部へ進むことに迷いはなかったんですか?

菊池:やっぱり両親の影響が大きかったと思います。患者さんを助けて、感謝される姿を見てきましたから。

金丸:医学部に入ってからはどのような生活を?

菊池:私立の医大って、高校の延長みたいにスケジュールがびっしりなんですよ。1限から5限まで授業が詰まっていて、そのあと17時から21時までは部活でテニスをして。授業とテニスで一日が終わる、という感じでした。

不要不急でも夜間救急にやってくる人たち


金丸:お父様が産婦人科、お母様が整形外科ということですが、菊池さんはどのように専門を決めたのでしょうか?

菊池:産婦人科と整形外科は身近だったので、それぞれに魅力を感じていました。研修医として産科でお産に立ち会ったときは、幸せな空気に包まれて、僕までもらい泣きしたこともありましたし、婦人科では悪性腫瘍の難しい症例に当たることもありました。

金丸:整形外科はどうでしたか?

菊池:劇的に良くなる場面が多かったですね。膝や股関節を悪くして歩けなくなってしまった人が、手術をした翌日から歩けるようになるのを見て、すごいなと思いました。それに今後高齢化が進むにつれて、整形外科のニーズはますます増えていく。いろいろ検討した結果、整形外科を選びました。

金丸:先日対談した東京慈恵会医科大学の大木隆生先生は、紆余曲折を経て血管外科に落ち着いたとお話しされていました。菊池さんの場合は、希望通りだったんですね。整形外科のなかでもご専門があるんですか?

菊池:私は脊椎外科なので、首や腰の疾患が専門です。

金丸:やはり専門が細分化されていて、部位別でのスペシャリストになるんですね。

菊池:日本の場合、ジェネラリストよりもスペシャリストを作る教育ですから。

金丸:いろいろと選択肢があるなかで、脊椎を選ばれたのはなぜでしょう?

菊池:脊椎疾患は、麻痺が起きてしまうと手術をしてもあまり機能が回復しないというイメージがありました。ところが、当時の私の上司はとても手術が上手で、術後の成績が非常に良く、良い意味で刺激を受けたのがきっかけです。

金丸:格好いいですね!ただ、ファストドクターと整形外科って、あまりつながりを感じませんが。

菊池:実は、2年の研修医期間を終えて帝京大学医学部附属病院の整形外科に入局し、医師3〜4年目の頃には、もうすでにファストドクターのことを考えていました。

金丸:えっ。じゃあ、相当早いですね。

菊池:帝京は救急が盛んなところです。重篤な患者さんを治療するICU、軽症から中等症の患者さんを治療するER、そして外傷センターの3つがあって、24時間ひっきりなしに患者さんがやってきます。

金丸:医療ドラマの世界を想像します。一刻一秒を争うような。

菊池:大学病院の救急外来は、緊急性が高い患者さんも多く受診しますが、そうではない患者さんも多く、大病院に負担が集中している構図に課題があると感じていました。

金丸:なるほど。ここで最初の話につながってくるんですね。

菊池:たとえば、夜中の3時ぐらいに酔っ払って喧嘩した人が来ることもあります。

金丸:それはまたどうしようもない(笑)。

菊池:もちろん病院に来てもらうことは、悪いことではありません。ただ、大学病院は難易度の高い患者さんを救うことが使命です。不要不急の患者さんが、大学病院の救急外来を、一般外来と同じような感覚で受診していることに違和感を感じていました。次第に、「この状況をどうにかできないかな」と思うようになりました。

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