大人のマナーをランクアップせよ Vol.14

初めての“高級鮨店”で失敗したくない、あなたへ。知っておくべき「正しい食べ方」と「お作法」

デートや接待など、大人になると高級鮨店で食事をする機会はぐんと増えるもの。

それにつれて求められるマナーもレベルアップするけれど、なかでも気後れしてしまうのが、「高級鮨店」でのマナーだ。

奮発して高級なお鮨を食べに行ったのに、気づかぬうちにマナー違反をしてしまい大恥をかいてしまった…なんてことになれば、せっかくの美味しいお鮨が台無し。

そこで今回は、男性も女性も知っておきたい高級鮨店でのマナーに注目。

5,000人以上の「和の作法」の指導にあたってきたプロから、鮨店で気をつけたい“粋”な立ち振る舞いを教えていただこう。


取材・文/有栖川 匠


▶前回:友人の結婚式で悪目立ちしていた28歳女子。マナーを知らずにNG行為を繰り返した結果…

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INDEX

1.交際3年の彼女の本音を探るべく、初の高級鮨店へ

2.覚えておきたい、和のカウンターでの上座と下座

3.「お箸」?それとも「手」?基本的な食べ方のマナー

4.意味を知れば納得!“お愛想”と言ってはいけない理由

教えてくれるのはこの方

一般社団法人 日本近代礼法
代表理事 齊木由香さん

酒蔵を営む家系に生まれ育ち、幼少期より年中行事には和服を着用し、和文化に親しむ。大学にて着物を生地から製作するなど、日本文化における衣食住について学ぶ。

温泉旅館の仲居や女将をはじめ累計5,000人に「和の作法」を教授。また、大学での客員教授や、数々のメディアで所作指導・現場監修を手掛ける。国内に留まらず、海外の方にも積極的に文化普及に努めている。

Episode:交際3年。そろそろ結婚?諒太は彼女の本音を探るべく高級鮨店へ


「こ、ここが、あの有名な高級鮨店…!」

赤坂の路地に佇みながら、諒太はひとりゴクリと喉を鳴らした。

目の前には、シミひとつない藍色ののれんが掲げられている。

何ヶ月も予約の取れない高級鮨店。社内のグルメな先輩のつてで紹介してもらい、ようやく予約の夜を迎えたのだ。

諒太も、もう31歳。バリバリの商社マンとして活躍している今、大抵の店では値段を気にせずメニューをオーダーできる収入はある。

けれど、ここまで高級な店を訪れるのは、人生で今日が初めてのことだった。

― いやいや。別に、気後れする必要なんてない。行くぞ!

今夜、この高級鮨店で──諒太は大きな勝負に出るつもりなのだ。


異動になった先の部署で事務職をしていた綾子は、上品で、控えめで、あらゆる所作が美しくて…。これまで諒太が遊んできたタイプとは全く違う、淡く輝く真珠のような美しさを持った女性だった。

― 俺、この子と結婚したい。

28歳の春、一目でそう感じた諒太は、持ち前の押しの強さで数多のライバルを蹴散らし、綾子の彼氏の座をゲット。

綾子が実は主要取引会社の社長令嬢というとんでもないお嬢様であることを知ったのは、付き合いだしてからずっと後になってからのことだった。



それから穏やかな日々が続き、交際は今年で3周年を迎える。

綾子への愛情がますます深まるばかりの諒太は、今夜綾子に、自分と結婚してくれる気持ちがあるのかをそれとなく尋ねてみるつもりなのだ。

― 綾子はご両親と、いつもこれくらいの高級店に行くって言ってたからな…。俺にだって綾子をこのレベルの店に連れて来られることを、きちんとアピールして安心してもらわなきゃ。

高級店に慣れていることをアピールしたかったため、待ち合わせはあえて外にせず、綾子とは直接お店で落ち合うことになっていた。

早めに店に到着した諒太は、「先にお飲み物、何か召し上がりますか?」という大将からの問いかけに「じゃあ、ビールをください」と答える。

そして、腕時計で待ち合わせまで20分あることを確認しながら、ビールのグラスを傾けつつ綾子の到着を待った。

諒太がすでにおかしてしまった間違いとは?


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