高級宿泊施設経営には、「7・30・100」の壁があるのを知っているだろうか。
1泊2食付きの高級旅館を考えたとき、どんなに設備や食事に凝ったとしても、1泊7万円以上取ることは心理的ハードルが高いというもの。
たしかに、通常の日本人の感覚だと、2人で15万円の宿は、よほど特別なご褒美でない限り選びにくい。
しかし、実際に日本の富裕層の行動を見ていると今や1泊30万円は十分とれるようになってきている。瀬戸内海の高級遊覧船「ガンツウ」や九州のクルーズトレイン「ななつ星」の価格を見ると1泊30万円以上するのに、予約がまったくとれない状況になっている。
さらに上を行くのがインバウンド。
きちんとした設備、ホスピタリティ、食事環境を整備すれば1泊100万円でも問題なく支払うそうだ。
実際、2023年4月に東京・八重洲に開業した世界で8番目のブルガリの名前を冠する高級ホテル「ブルガリ ホテル 東京」はダイナミックプライシング(需要と供給の状況に応じて宿泊価格を変動させる制度)を採用しているが、ツインルームの最低価格は1泊1室30万円台、しかもスイートルームから予約が埋まっているといわれている。
ほんの10年前には、東京だけではなく世界の先進都市にある外資系ホテルのツインルームの標準は500ドルといわれていたので、あっという間に5倍になったわけだ。
今後は、フーディーが発見した美食を核にして地方を盛り上げることが、地方創生の一番成功する方法になるだろう。
具体的には、大軽井沢経済圏、北陸オーベルジュ構想、瀬戸内ラグジュアリーツーリズムを計画している。
コロナ以前にインバウンドや富裕層を取り込んで成功した地方といえば、誰もが北海道のニセコを思い出すだろう。
ニセコの勢いは、コロナ禍になっても失われなかった。世界的な高級ホテルのパークハイアットやリッツ・カールトンが開業し大盛況だ。アマングループも2026年開業を目指して建設中。
外資系だけではなく、国内のデベロッパーも健闘している。
たとえば、三井不動産が開発したスキー場直結の一大リゾート「HINODE HILLS Niseko Village」は、世界10か国においてリゾート、ホテル、ブティックホテルを運営する「YTL HOTELS」と提携し、レジデンシャルホテルを分譲している。
ニセコの例のように、「美食」「インバウンド」という単語を複合的に使った「ガストロノミーツーリズム」、そしてそこに「富裕層」という単語も加えた「ラグジュアリーツーリズム」を発展させることで、地方を蘇らせたいと私は思っている。
3.本書のココがすごい!
今回紹介した、『「フーディー」が日本を再生する!ニッポン美食立国論 ――時代はガストロノミーツーリズム―― 』のすごいところは下記に集約される。
①日本の食は世界に誇れる文化であることを再認識できる。
②世界中のフーディーが訪れる名店リストが掲載されていてお得。
③世界を美食ツアーした気分になりテンションが上がる。
著者 柏原光太郎氏/「日本ガストロノミー協会」会長
慶應義塾大学卒業後1986年、株式会社文藝春秋入社。
「週刊文春」「文藝春秋」編集部等を経てニュースサイト「文春オンライン」、食の通販「文春マルシェ」を立ち上げる。「東京いい店うまい店」編集長も務める。
2018年、美食倶楽部「日本ガストロノミー協会」を設立したほか、「OCA TOKYO」ボードメンバー、食べロググルメ著名人、とやまふるさと大使なども務める。
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