牛肉進化論。炭火ステーキから肉割烹まで Vol.5

フェルミンチョ

FERMINTXO

素材そのものの存在感が光る若きシェフ渾身の肉料理

左.すっきりとしたデザインで、随所にモダンな意匠が。カウンターからは厨房の様子が見える。店名は修業時代のシェフの愛称

右.岩手産短角牛リブロースのグリル(350g)¥5,500~。彩り豊かな季節の焼き野菜と炭塩を添えて

コテコテな郷土系か、前衛的なモード系高級店か。二極化する東京のスペイン料理店にもの足りなさを感じていた読者諸氏へ朗報。スペインの今を感じられる料理が楽しめ、肩肘張らない雰囲気で使い勝手もよし、という店が7月、西麻布に誕生した。オーナーシェフは作元慎哉氏。バスク、カタルーニャ地方の名店で料理を学び、故サンティ・サンタマリア氏率いる『カン・ファベス』では部門シェフを務めた。まだ29歳ながら、経験豊かな気鋭の料理人だ。

ゆえに肉料理ひとつとっても、実に魅せてくれる。例えば自家製ソーセージ、ブティファラだ。「豚挽肉、背脂、塩胡椒だけで作るのがカタルーニャ流」と、バルセロナ郊外の小さな村にあるジビエ料理の名店『フォンダサラ』で習得した味を伝える。成型した仔豚料理は、伝統料理・コチニージョ(仔豚の丸焼き)の再構築。盛り付けはモダンだが、味わえばパリッとした皮の香ばしさから濃厚なゼラチン質まで、仔豚一匹の旨みを余すところなく味わえ、食べ応えも十分だ。

極めつけは、カタルーニャ名物・チュレトンをイメージした短角牛のグリル。骨付きのあばら肉を塊で豪快に焼くその料理に倣い、リブロースを大きくカット。強火で勢いよく焼いて余熱で火を入れる。これを口いっぱいに頬張り、さらりとした脂と肉汁が広がっていく時の幸福感といったら! 仕上げに振るエキストラヴァージンオイルが焼き目から染み入り、肉の持つ旨みをぐっと引き立てている。

豊かな経験と確かな技術に支えられたシンプルな料理は土地の空気を伝え、考える前に本能に「旨いぞ」と訴えかけてくるのだ。

現在、作元シェフは、東京のスペイン料理店一のワインセラーを作るべく、500本収納できるセラーを増設中。若手や新しい生産者のワインもどんどん紹介していく予定だ。16席の小さな店だが、カウンターならひとりでも寛げる。ここから、新しいスペイン料理の楽しみがぐんと広がっていきそうだ。

左.岩手県山形村産の短角牛を使用。切り出した後は常温に戻し、アリカンテの海塩を振っておく

右.仔豚を一匹丸ごと使ったパステル¥2,800(ハーフあり)。パステルはケーキの意。リンゴのピュレと

バスク地方の『アラメダ』を皮切りに、4軒の有名店で5年間料理を学んだ作元シェフ(写真右)

左.ワインに合う自家製ソーセージ、ブティファラ¥1,600

右.野菜のソテーや豆の付け合せも、火入れ加減と塩の利かせ方が絶妙で、肉に負けない印象を残す


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