SPECIAL TALK Vol.105

~現役復帰した今だからできることがある元オリンピアンとして伝えたいスポーツの力~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。


競技の世界に戻り、日々の幸せを実感


金丸:それから子育てを経験し、オリンピックを裏方で支え、そして再び競技者に。

小谷:私が競技から離れていた30年の間に、シンクロはどんどん進化して、すごく難しくなっています。ただ、自分でも驚いていますが、ソウルオリンピックの頃より、50歳を過ぎた今のほうが難しいことができているんです。

金丸:えっ、本当ですか?

小谷:びっくりですよね。この歳になっても、できなかったことができるようになるのは本当にうれしくて。まだ成長できるんだという感覚が、日々の生活の励みになっています。それに、私が頑張っている姿を見た周りの方たちが、すごくポジティブな影響を受けてくれていて。

金丸:まさにスポーツのチカラです。

小谷:誰かが何かに一生懸命打ち込む姿を見て、人は感動を覚えたり、刺激を受けたりする。それを改めて感じています。新たな目標に向かって挑戦している今を楽しみつつ、多くの人をインスパイアできればいいなと思っています。

金丸:ちなみに、マスターズでも誰かと組まれるのですか?

小谷:はい。アテネ大会で銀メダルを取った藤丸真世(みちよ)さんと、パートナーを組んでいます。TBSの現役社員で、働きながら子育てもして、練習もして。ふたりでやり始めたことだけど、TBSの番組で取り上げてもらったり、同じ会社にいる多くの方々に応援していただいたりしています。

金丸:TBS全社を挙げて応援されているんですね。

小谷:藤丸さんは私より13歳年下ですが、一緒にいると、次々とエネルギーが生まれてくるような存在です。練習中も楽しくて楽しくて。「もっとこれもできるんじゃない」「あれもできるんじゃない」「楽しいね」「あっはっはっ」って(笑)。

金丸:本当に楽しそうですね(笑)。

小谷:シンクロは楽しいですよ。だから続けていられるんです。ただ、シンクロに対する世間のイメージが、「見るのはきれいだけど、選手たちはつらそう」というのが定着してて……。

金丸:私もそう思っていました。

小谷:ですよね。そのイメージを変えたい、というのもふたりの目標のひとつなんです。つらいスポーツじゃないよ、面白いよっていうのをどんどん発信して、「アーティスティックスイミングって楽しそう」「やってみたい」と思ってもらえるスポーツにしたいですね。

金丸:「練習がハード」というのと「楽しい」というのは、両立しますから。一方で、体育会系って、いまだにデータによる科学的な裏付け以上に、根性論が幅をきかせていることがあるじゃないですか。

小谷:そうですね。スポーツに根性は欠かせませんが、根性だけでどうにかなるわけでもありません。

金丸:私もかつてはウサギ跳びをやらされましたが、効果があるどころか、ケガしやすくて、いいことなしだと、後々分かりました。日本独自のよく分からない基準の話もありましたが、そういうのも早くなくしていかないと、運動が嫌いになる人が増えるだけじゃないかと。

小谷:そうかもしれません。私と同じように、育児が一段落した女性が、もう一度スポーツを楽しめる環境がもっと整備されれば、健康的で、より豊かな社会にもなるし、きっと医療費の削減にもつながるはずです。

金丸:マスターズだけでなく、小谷さんがこれからもスポーツ界のために、そしてスポーツ普及のために活躍されることを期待しています。

小谷:ありがとうございます。ここ最近、私は人生で一番の幸せをかみしめています。目標に向かって毎日努力し、たくさんの方に支えてもらっている。こうやって金丸さんとお話しして、温かいエールをいただいた上に、おいしい料理まで(笑)。

金丸:今日の出会いが小谷さんにとって励みになったなら、私としても光栄です(笑)。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

【SPECIAL TALK】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo