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「わー、見てみて!海が見えるよ!」
迎えた7月中旬。由依たちはアラモアナにある高層コンドミニアムの一室を、バケーションレンタルで住むことにした。
2ベッドルームの広い角部屋には、一面ガラス張りのリビングがあり、目の前にアラモアナの青い海が広がる。
ショッピングセンターに繋がるこのビル内には、広いプールにジムや公園、緑に囲まれたバーベキュー施設の他、シアタールームやヨガルーム、ゴルフシミュレータールームなど、さまざまなアメニティ施設が充実している。
「それじゃ、色々と買い出しに行かなきゃ」
部屋には家具一式が揃っているが、消耗品などが必要だったので、駐車場から続くターゲットで買い物をすることにした。
その後、軽く夕飯を済ませようと1階にあるフードコートへと向かい、愕然とした。
「あれ、閉まってる…」
旅行で来るたびに訪れていた、日本食が集まったシロキヤジャパンヴィレッジウォークは、残念なことに、コロナのせいで閉店していた。
「やっぱり、この数年で変わってしまったのね…」
結局その日は別のフードコートでお弁当を買い、移動で疲れた体を休めようと早めに就寝した。
次の日、朝から夫は予約をしていた中古車を購入しに出かけた。
コロナのパンデミックで観光客が一気に減った時、レンタカーサービスや車のディーラーたちはみな、車を売り払ってしまった。
その後、再び買い戻しが行われたが、今度はアメリカ本土からの旅行客が一気に増えたため、夏はレンタカーの長期予約が取りづらく、値段も高くなっている。
そこで、中古車を購入して帰国の際に売ることにしたのだ。
夫はハワイらしくJeepに乗りたいと言ったが、「日本車は中古車でも価値が落ちないよ」と聞いていたので、レクサスのSUVを購入することにした。
「ねぇ!せっかくだしワイキキに行ってみようよ」
14時過ぎに帰ってきた圭介は、1人妙に張り切っている。
昔からハワイが好きだった彼は、いつかハワイで暮らすのが夢だった、と嬉しそうに語っていた。
「じゃあ今日は観光がてら、散策してご飯を食べて帰ろうか」
そうして私たちは、車でワイキキに移動した。
『BASALT』で名物の黒いパンケーキを食べた後、Royal Hawaiian Centerなどを見て回る。
少し前に日本でも、ホノルルの観光客が激減し、閑散としている様子がワイドショーなどでも映し出されていたが、今やハイブランドの入り口の前には列ができ、昔と変わらないほど人が戻っていた。
買い物をしながら散策をし、18時に差し掛かろうとしていた時。
まだ日も明るい中、Kalakaua AveからLewers Streetへと曲がったところで、突然後ろにいた夫が「危ない!」と叫んだ。
由依は声に驚き、体がよろける。
すると歩道のスレスレを、2人乗りのバイクが路駐の車を避けながら不自然に通り過ぎて行った。
この記事へのコメント
圭介は何かマズイ事に巻き込まれたとかでしばらくハワイに逃げて来た感じかな? そんな要素が含まれてるなら面白くなりそう!
海外が舞台の話は面白いから今後に期待してます。