2.三ツ星のレジェンドが新天地で示す、日本料理の美しき未来@虎ノ門
『日本料理かんだ』
静かに佇む扉が醸す一流の空気感に背筋が伸びる
『ミシュランガイド東京』の創刊以来16年、和食で唯一三ツ星を取り続けている『日本料理かんだ』の神田裕行さん。
和食界のレジェンドが、オープン19年目にして、2022年の2月に元麻布から虎ノ門に移転した。
新店の内装を手掛けたのは、現代美術作家にして建築家の杉本博司さん。
高層ビルの1階にありながら、入り口に看板は無く、その佇まいはまさに都会の隠れ家。三ツ星にふさわしい風格ある佇まいを見せている。
扉を開ければ、外界の喧騒から隔絶された清閑な空間が広がる。
和食の華であり、料理人の実力が分かるとまで言われる“お椀”。“かんだ”では旬の食材を用いたしんじょがおなじみ。
写真は空豆とエビを合わせた春の一例。淡くクリアな出汁に合う。
お造りの「鯛キャビア」。鯛とキャビアの合間に忍ばせたごま豆腐がミソ。
コースは44,000円~。
高い天井が開放感を与える店内は、春日杉の銘木のカウンターも清々しく、後方の壁面に同じ春日杉の壁付棚が並ぶ様子はどこか前店を彷沸とさせる。
店の広さは倍近くになったものの、席数は以前のまま。
数寄屋造りに固執せず、伝統を取り入れながらもモダンな意匠を凝らした空間は、王道を外すことなくさりげなく遊び心を散りばめる神田さんの料理とリンクする。
「新天地でも、すべきことはお客様をもてなすことのみ」と、語る神田さん。
背筋がピッと伸びるような心地よい緊張感の中、更に円熟味を増してきた“神田料理”の真随を味わいたい。