3.ジビエ料理の美味しさを教えてくれる名フレンチ@西麻布
『ラミ・デュ・ヴァン・エノ N』
ジビエのオーソリティによる、フランス料理ならではの力強い品々に陶酔する
1997年、神宮前にオープンしたフレンチレストラン『ラミ・デュ・ヴァン・エノ』。
シェフ・榎本 実さんによる骨太なジビエ料理が評判となり、17年間にわたってゲストを満足させてきたが、2014年に惜しまれつつクローズした。
あれから、8年。2022年9月、榎本シェフが再びレストランの厨房に立つ、という朗報が舞い込んだ。
新たなステージに選んだ地は西麻布。店名は“新しい”という意味のフランス語「Nouveau」の頭文字を添え『ラミ・デュ・ヴァン・エノ N』に。
大切な人とは特別なフレンチへ。ジビエとワインのマリアージュをここで知る
料理にも、時代に即した変化が見られる。
まず、ひと皿ごとのボリュームを以前よりも控え、その分皿数を増やしたおまかせコースのみに。
しかも、牛スネ&鶏の出汁をメインとしてさまざまな出汁の旨みを融合させた、「50℃ 仏 和のコラボ」と題したスープからスタート。
そして主役のジビエは、熟成期間を長くしすぎないことで、複雑味を湛えつつ軽やかな食後感に仕上げることに心を砕く。
練達だからこそ、緩急自在。その技を堪能したい。
前菜にもジビエを、という声から生まれた「雷鳥のビスク」。
焼いて、煮て、粉砕して……、気が遠くなるような行程を経て完成する。
「鴨の燻製のムース」は、華やかなモンブラン仕立てに。
バターナッツの絞り出しの中に、ピレネー産サラミやクルミと合わせた鴨肉が潜んでいる。
ソムリエの富永直人さんが選んだコルベールに合う1本は、ニュイ・サン・ジョルジュ。
「今のシェフの料理には、エレガントなブルゴーニュがマッチします」
64歳にして、再び現場で腕を振るうことに。
フランス料理への冷めやらぬ想いから「人生最後の挑戦」と、オープンを決意したという。