2022.11.27
New Yorkに憧れて Vol.12年後・・・
「はぁ…」
仕事終わりに、僕はミッドタウンウエストのカフェでコーヒーを飲みながらため息をつく。
ニューヨークに来て2年が経ち、僕は32歳になる。
僕は輝かしいキャリアを積んでいる…はずだった。
ポジションは変わらないが、給与は円安の影響もあって1.6倍になり、年収は5,000万円を超える。
それでも、キャリアとしては輝かしいと言えない状況にここ最近落ち込んでいる。
僕は昔から、ニューヨークの金融業界で颯爽と働くバンカーに憧れていた。
高校生のときに、父が仕事でインディアナ州に転勤。
アジア人が少ないエリアということもあり、学校での人間関係は、それほどうまくいっていなかった。でも当時の「周りを見返したい」という思いが、夢への原動力となったのだ。
だから僕は必死で勉強し、課外活動にも励み、第一志望ではなかったが、アメリカのそこそこの大学に合格する。そして大学卒業後は、日本の大手証券会社に就職した。
本当はアメリカにある銀行に入りたかったが、ノンネイティヴスピーカーの僕にとって、商談の多い銀行員は、想像以上にハードルが高かったのだ。
それでも、「"バンカー"という夢に近づけた」と思っていたが、日系の証券会社での仕事は通訳のような役割で、重要な仕事をさせてもらえなかった。
アメリカで外国人として扱われていた僕は、日本でも何かと特異な存在として見られる。
けれど僕は諦めず、就職した先で成果を上げ、日本で米国系の投資銀行に転職する。
ある日、ニューヨークからディレクターが来る機会があり、そこで僕はサポートをしながら彼に近づき、無謀にも直接彼に「アメリカで働きたい」と意志を伝えた。
すると彼はあっさりと「ならアプライすればいい」と言ってくれたのだ。
その言葉がどこまでの効力を持っていたのかはわからないが、ついに僕は念願の夢だったニューヨークで、マーケット部門のセールスを担当できることになった。
― 俺は、アメリカで成功してみせる!
日本で良い成績を収めていた僕は、正直かなりの自信があった。
しかし……。
ニューヨークでの仕事は、日本での経験を基に積み上げるというより、1から始めるような感覚だ。
マーケットも顧客も文化も何もかもが違う。
初めは振り落とされないように付いていくだけで必死だった。
ただ半年もすれば要領を覚え、このまま順調に行ける気がした。
けれども、アメリカ企業も結局はコネと政治の世界。
要領がよくコミュニケーション能力の高いネイティヴスピーカーばかりにいい仕事が回り、僕は一向に自分が思うような仕事ができない。
成績だって悪くない。それなのに、他の同僚が出世するたびに、僕は苦渋を味わった。
その上、こっちに来て半年ほど経ったとき、日本にいる彼女から一通のLINEが届いた。
「ごめん、好きな人ができたの」
聞けば、彼女はアメリカに住むことや、僕とのバックグラウンドの違いにも不安が拭えなかったらしい。
夢を持ってニューヨークにやってきたが、恋愛も仕事もうまくいっていない。
こんなはずじゃなかったのに、と思いながらも現状維持しかできない自分が情けない。
そんな重い感情を打ち消すように、すっかり冷めたコーヒーを一気に飲み干す。
そろそろカフェを出ようかなと思っていたとき、ある2組のカップルが入ってきた。
どちらも、男は20代後半のアメリカ人で、女性は20代前半のアジア人だった。
女性のほうは日本人か?と思っていると、彼らが隣のテーブルにきた。男2人は、自分の隣にそれぞれ女性を座らせて、まるで“物”かのような扱いで体を密着させながら髪や体を触っている。
そして、男同士英語で会話をし始めた。
早口にスラング混じりで、こう話しているのが聞こえてきた。
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