「海外で、挑戦したい」
日本にいる富裕層が、一度は考えることだろう。
そのなかでも憧れる人が多いのは、自由の街・ニューヨーク。
全米でも1位2位を争うほど物価の高い街だが、世界中から夢を持った志の高い人々が集まってくる。
エネルギー溢れるニューヨークにやってきた日本人の、さらなる“上”を目指すがゆえの挫折と、その先のストーリーとは?
現状に満足せず、チャレンジする人の前には必ず道が拓けるのだ―。
Vol.1 憧れのバンカーとして
雅也(30歳)大手投資銀行勤務
ブブー…バババー…。
クラクションの音が鳴り響く。
Newark Liberty 国際空港からUberでマンハッタンにある「ザ・ペニンシュラホテル」へ向かう途中、リンカーントンネルの手前で大渋滞にハマってしまった。
長時間のフライトで疲れた体を癒すように窓の外を眺めながら、僕は昔のことをぼんやりと考えた。
― 僕が前に住んでいたインディアナ州とは、街の雰囲気が全然違うな…。
あ、そういえばとスマホを取り出し確認すると、恋人からLINEが届いている。
「雅也、無事に着いた?落ち着いたら電話してね」
彼女とは付き合って1年ほどになる。食事会で知り合い、見た目もタイプで話も合い、気がつけば一緒にいるようになった。
付き合い始めて3ヶ月ほど経ったある日、僕が以前アプライしていたニューヨークのポジションに空きが出た、と連絡が来たのだ。
それからとんとん拍子で採用が進み、正式にニューヨークへの転籍が決まった。
僕は、アメリカで死ぬ気で頑張りたかったし、もう日本に帰る気などない。
だから、僕は『ANTICA OSTERIA DEL PONTE』で、彼女にプロポーズした。
だが、彼女の答えは意外なものだった。
「別に結論を急ぐ必要はないんじゃない?」
ダラダラ遠距離恋愛をするのは性に合わないが、結局別れることも将来を約束することもなく、僕は1人でニューヨークへやってきたのだ。
「着いた。後で連絡する」
そう返すと、僕は深く息を吸った。
「やっと、ここまで来られた…」
ずっと憧れだったニューヨークでバンカーとしてキャリアを積めることに、僕はワクワクした。
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