2022.09.21
SPECIAL TALK Vol.96令和のニューリーダーたちへ
ときには高さ2,000メートルを超えるような垂直の壁を前に、道なき道を登っていく、アルパインクライミング。
「登山界のアカデミー賞」とも呼ばれるピオレドール(金のピッケル)賞を日本人で唯一、3度も受賞しているのが、アルパインクライマーの平出和也氏だ。
平出氏は未踏峰や未踏ルートにこだわり、文字どおり道を切り拓いてきた。
大学時代まで登山と縁がなかったという平出氏がどのように山と出合い、なぜ「未踏」にこだわるようになったのか。
そして、失敗がつきものである登山に挑戦し続け、見えてきたものとは。
金丸:本日は登山家の平出和也さんをお招きしました。お忙しいところ、ありがとうございます。
平出:こちらこそ、お招きいただき光栄です。
金丸:今日の対談の舞台はミシュランの一ツ星フレンチ『ラペ』からスピンアウトした、日本橋室町のおでん屋『平ちゃん』です。『ラペ』で行っていた、おでんを提供する限定イベントがあまりに好評で、それがきっかけで生まれたお店です。フレンチの要素を取り込んだ、季節に応じたおでんをいただけるそうです。
平出:お話だけでなく、料理もとても楽しみです。
金丸:実は、平出さんとはもっと早い時期に対談する予定でした。ところが、「凍傷になってしまって」と連絡をいただきましたよね。そんな理由で延期になったのは初めてですし、心配したのですが、無事回復されたようで何よりです。
平出:今朝もトレーニングで20キロくらい走ってきましたが、年末から3〜4ヶ月ほどは寝たきりでした。両手両足のダメージは1、2年を棒に振ってもおかしくないくらいだったんですが。
金丸:そんなに深刻な状況だったんですか……。
平出:こうやってリカバリできたので、周りにも驚かれています。
金丸:驚異の回復力ですね。そのときはどちらに登られたんですか?
平出:カラコルム山脈の未踏峰です。パキスタンと中国の国境付近に位置する山なんですが、コロナ禍の影響でずっと登山ができずにいました。でも、ちょうどコロナが落ち着いたタイミングの、昨年12月にチャンスがあって。
金丸:未踏峰ということは、これまで誰も山頂まで登ったことがないということですよね。
平出:はい。登頂はできましたが、マイナス40℃くらいの低温下で。寒さへの対処は慣れていたけれど、今回は想定を上回る寒さで凍傷に。
金丸:それでも今年もヒマラヤに登る予定だそうですね。大変な目に遭ったのに、怖くないんですか?
平出:怖さは感じますよ。たとえば、下を見れば、2,000メートルくらいの垂直の壁が目に入ることもあります。
金丸:私は高所恐怖症なので、想像しただけでどうにかなりそうです。
平出:「もし落ちてしまったら」と考えたら、もちろん怖いです。だけど、それを乗り越えた先には、見たことのない世界があふれている。だから前に進めるんです。
金丸:好奇心が恐怖を上回るんですね。
平出:それに怖さ自体は悪いものじゃありません。20代前半の無鉄砲に登っていた頃は、あまり恐怖を感じていなかったように思います。でも勇敢だったわけじゃなく、「今、足元にこういう危険がある」と気づく能力が足りなかっただけだなと。それに、自分の恐怖心を直視しようとしていませんでしたし。
金丸:よく知らないからこそ無茶ができて、それが成功につながることは、ビジネスの世界でもあります。もちろん、取り返しがつかないくらい大失敗することもありますが。
平出:そうですね。管理された安全な環境ではなく、むき出しの自然に挑むということは、どこかで一線を越える必要があります。ただ越えた先には、「家に帰る」というゴールがないといけません。昨年末の登頂ではちょっと失敗して負傷してしまいましたけど。
金丸:「一線を越える、でも生きて帰ってくる」。とても重い言葉ですね。私をはじめ多くの人は、生命の危機にさらされるようなことはなく日常を生きています。今日は平出さんの生い立ちを伺いながら、普段は知ることのできない登山家の生き様に迫りたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.12.20
Vol.123
~モデルから放送作家へ。異色の経歴は恐れずに踏み出した証拠~
2024.11.21
Vol.122
~自分の体を認めることが、自分を好きになるための第一歩になる。~
2024.10.21
Vol.121
~スポーツの喜びをより多くの人が体験できるよう、これからも挑戦はやめない。~
2024.09.21
Vol.120
~日本の農業が続くための仕組みを作り、アップデートできるよう挑み続ける~
2024.08.21
Vol.119
~すべてを制覇したい気持ちは変わらない。経営陣になっても燃えたぎる闘志がある~
2024.07.20
Vol.118
~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~
2024.06.21
Vol.117
~1杯で幸せになる利他的なコーヒーを目指して~
2024.05.21
Vol.116
~多くの人の期待と希望を背負う街づくりほど、面白い仕事はない。~
2024.04.19
Vol.115
~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
おすすめ記事
2022.08.20
SPECIAL TALK Vol.95
~人生で一番やりたいことを最初にやれた。今は体当たりで社会に貢献していきたい~
- PR
2024.12.19
「彼のこと、気になってきちゃった…」女性との距離が急速に縮まる、特別な気持ちの伝え方とは
2016.05.19
この手があった!1か月超ステイなら高級サービスアパートメントという選択肢
2015.12.18
接待慣れした美食家はここでもてなせ!サプライズで喜ばせる名店6選
- PR
2024.12.20
初心者も楽しめるカジノがアツい!“大人のテーマパーク”「パラダイスシティ」主催のイベントに編集部が潜入
2018.09.01
¥100でハイボールと唐揚げ、泡飲み放題¥5,500!お洒落なのに低コストな「新・飲み会の聖地」はココ!
2024.03.10
「コスパが良くて、特別感があって絶品!」歓送迎会の参加者全員が喜ぶ、銀座・丸の内の店3選
2024.05.02
日本酒好きな彼女とのデートにおすすめ!ゆったり落ち着けるカウンター和食3選
2021.01.13
「サクッと一杯ならココ!」覚えておくと便利な目黒・権之助坂の店6選
2016.06.24
MBA医師と学力女王が贈る「圧倒的な勝ち組の最強の勉強法」講演会が開催!
東京カレンダーショッピング
『かに物語』:〆まで楽しめる雑炊の素付き!蟹の旨みがたっぷりと溶け出すかに鍋セットミニ
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『東京京橋おばんざい醸』:肉を引き立てる3種の塩!A5黒毛和牛を使ったローストビーフ
『かに物語』:海老・帆立・蟹!ベシャメルソースに、各種海の幸をトッピングした贅沢グラタン
『UMIKARA』:薄切り・厚切り食べ比べ!特製出し汁で味わう若狭湾真鯛の鯛しゃぶセット
『パンツェロッテリア』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『オリベート』:黒トリュフ香る、口当たりクリーミーな究極のティラミス
『ミホ・シェフ・ショコラティエ』:日本を代表するショコラティエ―ルが作る、 ショコラ好きのための濃厚ガトーショコラ
『LOUANGE TOKYO』:アート感溢れるビジュアル!口溶けなめらかな大人の生チョコレートエクレア(6種)
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ