東京レストラン・ストーリー Vol.15

大学時代に思いを伝えられなかった憧れの先輩と再会。彼女に「あの時、私も好きだった」と告白され…

外食が思うようにできなかった、2021年。

外で自由に食事ができる素晴らしさを、改めてかみ締める機会が多かったのではないだろうか。

レストランを予約してその予定を書き込むとき、私たちの心は一気に華やぐ。

なぜならその瞬間、あなただけの大切なストーリーが始まるから。

これは東京のレストランを舞台にした、大人の男女のストーリー。

▶前回:東京最後の日、昔の恋人を食事に誘った女。故郷に帰ると告げると、彼はまっすぐこちらを見つめて…


Vol.15 聖也(29歳)思い出の店で噛み締めるサンドイッチ


“誰の人生にも、一度は奇跡が起きる”

もしそうならば、僕の人生における奇跡は、たぶん今日起きたのだと思う。



「本日は、誠におめでとうございます」

挨拶をして、ご祝儀袋を手渡す。今年に入って5回目ともなると手慣れたものだ。

東京駅から徒歩数分のところにある結婚式場のロビーは、僕が勤めている証券会社の面々で溢れている。

今日は、同期の結婚式だ。

僕はウェルカムドリンクのカクテルを手にとり、親しい同期たちの姿を目で探した。

そのとき――。

前方にいる、ライトグリーンのドレスに身を包んだ女性に視線がとまる。

「…え、祥子さん?」

どう見ても、祥子さんだ。

大学時代に所属していた写真サークルで、ずっと片思いをしていた1個上の代の先輩…。

― どうして、ここに…?

10年ぶりの予想もしない再会に固まる僕に向かって、祥子さんはゆっくり近づいてくる。

「聖也…?そうだよね?びっくり。え、新郎側のゲスト…?」

祥子さんは目を丸くして言った。それから、自分は新婦と高校時代からの友人なのだと説明した。

「こんな偶然、あるのね」

祥子さんは顔をほころばす。

「会えて嬉しい。最近、サークルのみんなとの集まりもなくなってきたし。特に私、いま大阪にいるから、昔の友達が恋しくって」

「大阪に。転勤ですか?」

「私の転勤じゃなくてカレの転勤。突然決まって、先月引っ越したのよ」

僕は見知らぬ「カレ」を想像し、ひそかに落ち込んだ。

― もう随分前の話なのにな。

自分にあきれながら、大人びた祥子さんの横顔を見つめる。

この記事へのコメント

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No Name
聖也と祥子、共有した思い出がある事、それを今でも覚えている事に幸せを感じる、素敵な話だった。そこに奇跡を感じる事ができる聖也の感性もいい。
2022/06/22 05:1799+
No Name
お互い好きだったのね。何だか切ないけれど素敵な物語!
2022/06/22 05:3179返信3件
No Name
10年たっても色褪せない、共通の思い出があるなんて素敵ですね♡
2022/06/22 05:3562
No Name
甘く切ないけれどステキなお話でした! 10年振りに会った祥子さんが、ゆうに100kgを超える体型になっていたら、聖也はどう思ったのかなとか、朝からくだらない事を考えてしまった....。
シャングリラホテルは東カレ小説でよく出てくるので、次は違うホテルのラウンジやカフェで期待してます〜。
2022/06/22 05:4430返信2件
No Name
男性側に彼女がいるかは描かれてないけど、女性側に彼氏がいたとしても、今うまくいっているかはわからない訳だし、告白ほしかったなぁ

でも「変わらないもの」・・・

当時と一緒で告白できなかったかぁ
2022/06/22 05:4322
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