抱かれた夜、抱かれなかった夜 Vol.2

西新宿のタワマンに住んでいるのに、毎回デートでホテルを取る彼氏。友人から「怪しい」と諭されて…

『今日は家族3人でキャンプ。来年は4人家族になるので、3人でする最後の旅行になりそうです』

Facebookにアップされていた、3日前の投稿。そこには2歳くらいの男の子を抱く聖司と、彼に寄り添う女性が写っていた。

いつも私に見せる表情とは、全然違う。彼は完全に“父親の顔”をしていた。

画面をスクロールしながら、聖司の言葉を思い出す。

「結婚したいと思ってるよ、って言ってくれてたのに…」

呆然としている私を横目に、絵里は冷静だった。

「女を抱くための常套句だよ。そういう言葉を簡単に吐く男ほど、信用しちゃダメなの」

その後も慰め続けてくれた彼女と別れた私は、1人あてもなく西新宿方面へ歩いた。

「付き合う男のSNSは、チェックしといたほうがいいんだよ」という絵里からのアドバイスで、私は5年ぶりにFacebookへとログインしてみる。


聖司の家族写真をスクロールしながら、彼との3ヶ月を振り返った。

― あのロマンチックな夜景も、甘い言葉も全部私を抱くためだったの…?

絶望した私はふと、拓也のことを思い出した。私の期待を裏切り続けた元カレは今、何をしているのだろうか。

検索ボックスに、拓也のフルネームを入力してみる。すると、いとも簡単に彼のページが見つかった。アイコンは以前と変わっていなくて、懐かしい気持ちが込み上げてくる。

投稿の一番上は、マイホームを購入したという投稿。その下には、転職したという報告。ゆっくりタイムラインをスクロールしていく。

そこにはタキシード姿の拓也と、ドレス姿の女性が微笑んでいる写真があった。2人は海をバックに手を繋いでいる。彼は私と別れた後に付き合った人と、結婚していたのだ。

幸せそうな画像の下には、こんな投稿文が記されていた。

『一生側にいるとか、簡単に誓うことは難しいけれど。それでも今の僕は君を愛しています』

― 簡単に誓うことは難しい、か。

「ずっと一緒にいてくれる?」という言葉に「いいよ」と即答する男は、不誠実なのだろうか。それなら、即答できない男はどうなってしまうのだろう。

誰もいない真夜中の西新宿。私は高層ビルの間を歩きながら、グルグルと考え続ける。

そのとき、LINEの通知が鳴った。…聖司からだ。

seiji:今日はごめんね。ちゃんと埋め合わせするから!なかなかとれないホテルが予約できたんだ。

メッセージを読んだ私は、いつもの質問を投げかける。

葉子:聖司、本当に私と一緒にいてくれる?

返信はすぐに来た。

seiji:もちろん。ずっと一緒にいるよ。

その通知を見た瞬間、私は聖司のFacebookに投稿されている家族写真に、いいねを押した。

そして、LINEをブロックする。既読はつけないまま。

未来を約束させるような答えにくい質問にも即答できる男なら、抱かれてもいいと思っていた。…でもそれは間違いだったようだ。

一時的に女性を安心させるような言葉を、何のためらいもなく吐ける男は、逆に怪しい。

― 甘い言葉に騙される女は、もう卒業しよう。

月の見えない夜空の下、LOVEのオブジェだけが淡く光っていた。


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