甘い墜落 Vol.2

「婚約者の彼だと、退屈」平凡な未来に鬱屈する女が、他の男に魔が差してしまい…

「彼以外を、好きになってはいけない」

そう思えば思うほど、彼以外に目を向けてしまう。

人は危険とわかっていながら、なぜ“甘い果実”に手を伸ばしてしまうのか。

これは結婚を控えた女が、甘い罠に落ちていく悲劇である。

◆これまでのあらすじ

経済系週刊誌の記者としてキャリアを積んできた美津。激務の日々を交際4年目の彼氏・大介に支えてもらい、結婚もほのめかされていた。

ある日、美津は突然、仕事の少ない部署に異動することになる。忙しさから解放された途端、彼との結婚に迷いが生じてしまい…。

▶前回:婚約者との結婚に迷う29歳バリキャリ女。彼女の傲慢な考えが、数々の“悲劇”を招いてしまう


― モヒートなんて、どの店で飲んでも同じだと思っていた。

「おいしいです…!」

美津は目を丸くして、カウンター越しに店主の誠司を見上げる。

先週、取材で訪れたバー『onogi』の店主だ。「今度はお客さんとして来てください」と言われたので、美津は大介を連れてやってきたのだ。

今日は、金曜の夜。L字型のカウンターには、若い女性もちらほら座っている。

「おしゃれなお店だな。バーなんて来るの、何年ぶりだろう」

ソワソワした様子の大介。彼を挟んで反対側には、女性2人組が座っている。

頬を朱色に染めながら小声で談笑するその2人を、美津はチラリと見た。

― 若いなあ。綺麗だなあ。

最近美津は、街に自分より年下の女の子が多くなってきたことに驚いている。

仕事に夢中になっていた結果、いつの間にか年を取っていたのだ。

― 30歳までには結婚したいなあ。

これまで漠然と口にしていた希望は、実際に30歳を目前にした今、気づけば切実な願望になっている。

― なのに。

「結婚したい」という気持ちは強くあるが「大介と結婚したい」と問われると、正直自信がない。

経済系週刊誌の記者だった頃は、忙しい自分を支えてくれる彼が、最高の結婚相手だと思っていた。今でも彼と結婚して幸せになれるとは思う。

しかし、一方でこんな思いもある。

― 私の人生、平凡すぎない…?

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