推す女 Vol.3

年収600万以上なのに貯金50万以下の28歳女。誰にも言えない“あるモノ”にお金を費やしていて…

「推し活」を続けるための決断!


翌日、私は、数年前にオフ会で知り合った、私より4歳上のオタク友達・薫子さんが暮らす中目黒のタワーマンションを訪れていた。

最近のオタクは、“擬態”が本当に上手だ。

私だって、会社では量産型キラキラ系OLのフリをしている。オタクだと知られて、引かれるのは嫌だ。

薫子さんは、むしろ女子カーストトップの風格さえ漂っている。必死に背伸びをして周りに合わせている私とは違う。どこからどう見ても都会の素敵なマダムにしか見えないので、最初に会ったときは驚いた。

まさかTwitterのハンドルネームが「かおる@いずみきゅんの部屋の壁になりたい」だなんて、誰も思わないだろう。

私のためにわざわざ取り寄せてくれたという甘口のシャンパンを飲みながら、広いリビングの大型テレビで「スクール・オブ・ヴァンパイア ツアーファイナル2018」のライブDVDを鑑賞する。

そのとき、ふと目下の悩みである“推し活とお金、将来の不安”について話してみた。

すると既婚者である薫子さんは、ニコニコと微笑みながらしれっと言い放った。

「友梨佳ちゃん。そんな悩み、結婚すれば解決するわよ」

「け、結婚…ですか?」

予想外の返答に私は少し面食らったが、戸惑いつつも「でも」と反論する。

「そんな、簡単に言われても…。私、今彼氏とかいないですし。それに、推し以上に好きになれる相手が見つかるかどうか…」

「いや、結婚は簡単よ。選り好みさえしなければね」

薫子さんはシャンパンを片手に即答する。

「うちは共働きだけど、夫の稼ぎだけで十分暮らしていけるから、私が稼いだお給料は、ほぼ自由に使っているわ」

彼女は、派遣で事務の仕事をしていると言っていたので、恐らく私より収入は低いはず。それなのに、素敵な家に住んで、セリーヌのワンピ―スを着て、推し活を思う存分楽しんでいる。

こんなに羨ましい人生があるだろうか。

「夫のことは、大切よ。いい意味で“便利な存在”だと思ってるわ。経済的にも精神的にも」

薫子さんによると、経済的な支援はもちろんのこと、趣味に深い理解のあるご主人のおかげで、心置きなく推し活を楽しめているという。

さらに“妻”という地位を手に入れたことにより、それだけで社会的に認められ、守られる存在になった。周囲からの目を気にしたり、将来への不安もない。

「結婚相手はね、経済力と優しさで選べばいいの。だって、ときめきやドキドキは推しがくれるでしょ?」

確かに、以前ちらっとお会いしたことのある薫子さんのご主人は、お世辞にもイケメンと言える容姿ではなかった。

でも、薫子さんがライブで遅くなった帰りに、わざわざさいたまスーパーアリーナまでランボルギーニで迎えに来ていたことを思い出す。すごく優しそうな笑顔で、薫子さんをまるでお姫様のように扱う人だった。

「それに、友梨佳ちゃんはアイドルみたいに可愛いし、婚活市場では引く手あまたよ」

「そ、そうですかねぇ……」

グラスの中から立ち上がるシャンパンの泡を見つめながら、私はぐるぐると思いを巡らせていた。




帰宅後、ソファに体をあずける。

― この部屋、狭いな~。

薫子さんが住んでいるマンションとは、大違いだ。タワマンに強い憧れはないが、いざ行ってみると、その利便性と絶景に心惹かれてしまう。

さらには、あの広いリビングにドンと鎮座した大型液晶テレビ。あんな大画面で毎日推しを見ることができたら、どんなに楽しいだろう。

― 結婚かぁ……。

自分で言うのもなんだが、私は10代の頃からそれなりにモテるほうだった。

だが、告白を断ると逆上されてストーカー被害に遭ったり、怖い経験をしたこともあった。だから、中学あたりから、男性に対して少し苦手意識を持つようになってしまった。

そんなとき、あるアニメに出てくるイケメン同級生キャラが私の人生を変えた。2次元の男性は嫌なことをしてこないし、ずっと理想の王子様でいてくれる…。

とはいえ、20歳を超えたあたりから、リアルで恋愛をしないと友達の話についていけないようになった。

仲間外れにされたくないから、「この人なら」と思えるような2~3人の男性とお付き合いをしてみたけれど、いずれも“推しより好きになれない”という理由で振ってしまった。

― いっそ、相手を無理に好きになろうとしなければ、うまくいくのかな…?

『ときめきやドキドキは推しがくれるでしょ?』という薫子さんの言葉が浮かぶ。

今までは、“好きにならなきゃ”と思えば思うほど、理想(推し)と現実(彼氏)のギャップに苦しみ、相手を遠ざけてしまっていた。

でも、結婚相手のことを「どうせ、便利な存在なんだから」と割り切ったら、案外うまくいくものなのかもしれない。

― やってみようかな、婚活……。

私はスマホで結婚相談所を検索し、口コミ評価が高かったところの無料カウンセリングをすぐに予約した。思い立ったが吉日だ。

「どうか、このモヤモヤが晴れますように……」

デスクの上に飾ってある、いずみくんのポストカードに向かい手を合わせる。

額縁の中のいずみくんは、静かに爽やかな笑みをたたえていた。


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婚活を始めてみた友梨佳。しかしそう簡単にはいかず…?

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