「あれっ、2人は知り合い?」
幹事の男性が、私と先輩を交互に見つめている。綾乃は初めて出会う“中村先輩”本人に驚きすぎて、言葉を失っていた。
「久しぶり」
彼は私の隣に座り、小さく「乾杯」と言ってグラスを合わせてくる。
「藍実、“今は”すっごく綺麗になりましたよね~!」
あまり嬉しくない、綾乃の援護射撃。
しかし先輩は「昔も綺麗だったけどね」と言い、綾乃の嫌味もサラリと受け流してくれた。
彼は今も、三軒茶屋に住んでいるという。
数年前に会社を辞め、フリーのディレクターとしてドキュメンタリー映画などを作っているという先輩の人生は、決して順風満帆とは言えないようだった。
でも苦労して自分の道を切り拓いてきた彼の話は、とても面白かった。
それが外見にも出ているのだろうか、昔より深みがあってカッコいい。吉沢亮似の彼に見つめられると、ドキドキしてしまう。
先輩の隣をキープしつつ、昔話に花を咲かせる。そして2次会が終わる頃には、すっかりイイ気分になっていた。…そのとき。
ふと顔をあげると、彼がこちらをジッと見つめてきたのだ。
「藍実ちゃんと、もっと一緒にいたいな」
昔とは違う、熱い気持ちが伝わるストレートな誘い。
私はこくりとうなずいていた。今日はまだ、彼と離れたくない。
「なんか買ってく?」
どちらが先に手を伸ばしたのかは、よく覚えていない。でも私たちは手を繋ぎ、これから観る映画に合いそうなワインとチーズを買って、すずらん通りを歩いていた。
三茶の街と、先輩はどこか似ている。懐かしくて、まっすぐで温かい。
並んで歩きながら「俺たち、これから付き合ってみない?」と言ってくれた彼の部屋で、私は初めて一夜を明かした。
隣で眠る中村先輩の横顔を見つめながら、ぼんやりと考える。
酒や映画を口実にして、まどろっこしい誘い方をするんじゃなくて、こういうストレートなほうが女には響くんじゃないか、と。
▶他にも:「やってしまった…」朝、昨晩一緒にいた男のベッドで目覚めた女がまずやるべきコト
▶Next:11月25日 木曜更新予定
次回・新宿編。27歳美女が、高級ホテルで男に絶句した夜
この記事へのコメント
早朝起こされて 朝マックしよう!言われたらショックだし😂
中村先輩は元々藍実が好きだったんだね。良かった良かった。
確かに、5年前中村先輩が言った 「この後ウチで1杯飲まない?」は安っぽかったねw