夫力★向上委員会 Vol.3

帰宅すると、異様に機嫌のいい妻が…。夫の知らぬ間に、女がコッソリ会っていた相手

「す、すみません…」
「いえいえ、こちらこそ」

慌てて大根から手を離す。だがその相手の顔を見て、私は思わず絶句してしまったのだ。

「りゅ、流星くん…!?」

近所にある高級スーパー。土地柄芸能人を度々見かけることはあったが、まさかここに流星くんがいるなんて。

そして同じ大根を手に取ろうとしてしまうなんて、想像さえしたことがなかった。

薄いブルーの色つきサングラスに、深めにかぶったキャップ。肌は想像以上に綺麗で、身長も見上げるくらい高く、全身から色気がダダ漏れている。

流星くんが持つと、大根でさえおしゃれな野菜に見えてきた。

― ヤバッ。本物、カッコよすぎない?

ドキドキする。俊平にときめいたのなんて、いつだっただろうか。もう思い出せないくらい遠い昔だ。


顔をまともに見ることもできず、足早にその場を去ろうとすると、流星くんのちょっと甘くてハスキーな声が耳に優しく入ってきた。

「僕のこと、知ってるんですか?」

私に向けられたその声に、全身がゾクゾクする。体内にある女性ホルモンが、最大限に活性化した気がした。

…なんだろう。この包み込まれるような、ただならぬ色気は。

しかも急に話しかけられたので、思わず声も裏返ってしまった。

「は、はい!いつも見てます!『夫力向上委員会チャンネル』大好きです」

化粧も直さず、適当な服装で来てしまった自分を悔やむ。どうして今日に限って、着古したシャツで来てしまったのだろう。もっとちゃんとしてくれば良かった。

― どうしよう、ちゃんと顔を見られない。

「若いイケメンって、存在しているだけで神だなぁ」なんて、くだらないことしか思い浮かばないのだ。

そのとき、どぎまぎしている私を見ていた流星くんが不意に笑った。その笑顔の破壊力たるや…。まぶしくて、キラキラと輝いている。

「あの。お名前伺ってもいいですか?」
「え?私のですか?」

スーパーの、しかも野菜売り場の前で、流星くんから名前を聞かれるなんて思ってもみなかったから、頭が真っ白になる。一体、これはどういう状況なのだろうか。

「ゆ、柚葉と言います。中山柚葉です」
「柚葉さん、ですか。また会えますか?」
「え?も、もちろん」

彼と別れた後。いつの間にか譲ってもらった大根を右手に持ったまま、呆然と立ち尽くす自分がいた。

そして左手には、一枚のメモ用紙。流星くんから渡された連絡先を握りしめていたのだ。

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