盛りラブ Vol.2

ついに現れた“理想の10箇条”を満たす男。ニヤニヤが止まらないズボラ女子の決心とは?

リモートワークが導入され、以前は往復1時間かかっていた通勤時間が、まるっと自分の時間になったはずだった。

その時間で生活を整えれば良いのだが、実際はゴロゴロして過ごすことが増えただけだ、と芹奈は思う。

体を拭いて、化粧水をつけた手で両頬をペチペチと叩きながら喝を入れた。

― ズボラから脱却する。絶対する!

彼女が真剣にそう決意したのは、人生で初めてのことだった。

歴代の彼氏たちには、付き合って数ヶ月で芹奈がズボラだとバレてきた。でも、彼らが眉をひそめて色々なことを言ってきても、全く改善する気にはならなかった。

“本気で好きじゃないから別にいいや”という感覚だったから、それで嫌いになるのならどうぞ嫌ってくれと言わんばかりに、ありのままの姿を見せてきたのだ。

美しい彼女の思いもよらぬギャップに、男たちはいつも苦笑した。

「もうちょっとちゃんとしたら?」「なんか…賑やかな部屋だね」

苦笑してそんなことを言ったあとの彼らの行動は、2種類に分かれた。きちんとした暮らしをするように彼女に教育を始めるか、もしくはギョッとして徐々に距離を置くか。

でも、芹奈にしてみれば、どちらも同じことだった。

「ふーん。ありのままの私は、そんなに好きじゃないってことね」

そんな感想を抱くだけで、焦ったり悲しくなったりはしないのだ。

それで、ズボラを貫き通してきた。


髪を乾かした芹奈は、枕元にある引き出しから小さなノートを取り出した。

パラパラめくって開いたのは『理想の男10箇条』を書いたページ。芹奈が大学生のときに友人と書いたもので、彼女は定期的にこのページを見返していた。

〜理想の男10箇条〜
①身長178cm以上あること
②学歴が早稲田大学卒以上であること
③自分より稼いでいること
④服装がオシャレであること
⑤奥二重であること
⑥落ち着いた大人っぽい性格であること
⑦手指が綺麗であること
⑧バスケが好きであること
⑨人生を楽しんでいること
⑩ありのままの私でも愛してくれること

1項目ずつ、瑛太が当てはまっていることを確認して、頷く。

しかし、最後の項目『ありのままの私でも愛してくれること』を見たとき、芹奈は首を小さく横に振った。

― “ありのまま”なんて、無理よ。

初めて本気で手に入れたい男を前にして、そんな甘ったれた気持ちはどこかに飛んでいっていた。むしろ一点の曇りもない、完璧な女の子だと思われたい。

昨夜、画面越しに「素敵すぎて、ちょっと緊張しちゃいますね」と言ってくれた瑛太を思い出し、芹奈はそんな切実な気持ちでいっぱいになるのだった。

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