「気持ちが変わることはないのかな?悪いところがあれば、直すから」
もうプライドなんてない。そんなしょうもないもの、かなぐり捨てればいい。気がつけば、僕はソファの上で正座をしていた。
今はただ、愛する妻の気持ちを取り戻したい。
そして離婚を回避できる方法があるならば、全力で行動に移すつもりだった。
「悪いところ…?」
眉を片方だけピクッと上げた柚葉の声が、静かに響く(悔しいけれど、こんなときでも妻は美人だ)。
「夫力、あげられる自信はある?」
僕には今、その“オットリョク”とやらが、どれくらいあるのかもわからない。どうすれば上がるのかさえ、全く見当もつかない。
でも、今はやるしかないのだ。僕の答えは、ただ1つ。
「もちろん。僕、頑張るよ!!」
すると空を仰いだ妻が、腕を組んでしばらく考え込んだかと思うと、こんな提案をしてきた。
「わかった。じゃあ半年待つから、その間に証明して見せて。もし俊平が変わったならば、離婚の話はナシにするわ」
― 半年か。きっと、なんとかなるだろう。
中山俊平36歳。東京都出身、大手広告代理店勤務。趣味はサッカー。笑ったときに右側だけ出るエクボがチャームポイント。
そんな僕に、今こそ変わるべきときがきたのだ。
「わかった、頑張る!!絶対に頑張るから」
こうして、僕の半年に渡る“夫力を磨く修行”がスタートしたのだ。
だがこのときの僕は、知る由もなかった。
まさか妻の心が「流星くん」とかいう、妙にキラキラした名前の別の男にかっさらわれていたなんて…。
◆妻の日記◆
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8月31日(火曜日)
夫に、ついに離婚を切り出した。切り出した途端、俊平があまりにも驚くから、私も驚いた。
私の不満に全く気づいていなかったなんて…。
俊平は「頑張る」と言っていたけれど、夫の「頑張る」ほど当てにならないものはない(天気予報のほうがちゃんと当たると思う)。
でもしばらく、様子を見ようと決めた。ただ本当に俊平は変われるのだろうか?正直、期待値はかなり低い。
…そろそろ、流星くんに会いに行かないと。
大好きな流星くんがいるだけで、私の心は晴れやかになるし、 満たされる。彼がいないと、もう私は生きていけないのかもしれない…。早く会いたいな。
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この記事へのコメント
柚葉、不倫して離婚を考えてるのに、離婚理由を夫が家事をしないからって事だけにするなら、ちょっとずるい気もするけど。
なんでチャームポイントの話を突然出す?
寒すぎるわ。