アイコンの画像は、東京タワーが映った夕焼けの写真。プロフィールには『瑛太』という名前と、個人事業主でコンサルをしていることが書かれていた。
投稿数は少なかったが、1枚だけ顔がはっきりとわかる写真を見つけたのだ。
― え、とってもかっこいい!
奥二重の優しそうな目に、すうっと通る鼻筋。黒のスキニーパンツに白いTシャツというシンプルな服を着こなすスタイルの良さ。
フィードをさらにさかのぼると、ある短い動画が目に入った。それは、野外のバスケットコートで、ウェアに身を包んだ彼がドリブルシュートを決める動画だ。
その短い動画を、何回も繰り返し見てしまった。偶然にも芹奈は高校時代から、バスケ観戦が趣味なのだ。
…というより、バスケをしている男子選手に目がないというのが正しいかもしれない。ゆったりとしたウェアを着て、ドリブルの素早い動きやシュートのときに伸びる身体。そのすべてに色気を感じるのだ。
― なんて素敵な人なんだろう!
動画をよく見るとコメントが付いていた。
『瀬谷、相変わらずバスケ上手いな!』
そのコメントのおかげで彼の苗字が『瀬谷』だとわかった芹奈は、早速Facebookで『瀬谷瑛太』を検索した。
そこでわかったことは、彼は現在29歳。そして、中学のとき慶應普通部に入学し大学まで進学した慶應生だということだ。早稲田大学を出ている芹奈は、学歴が似ているところに親近感を感じた。
― 2歳上か。外見はもちろんタイプだし性格も真面目そう。なんて理想的な男性なの!
芹奈はベッドから身体を起こし、プロフィールの下にある『メッセージ』ボタンを押した。
― こんなにかっこいい人、スルーできないもん…。
『夜分に突然すみません。仕事でワーケーションについて調べていたら素敵なアカウント見つけて、メッセージしちゃいました。私はお菓子の会社に勤めている芹奈といいます。怪しく思われて当然ですけど、瑛太さんがカッコよすぎてスルーできなかったんです』
見ず知らずの彼のもとへ、芹奈のメッセージは飛んでいったのだ。
「20代のうちに、絶対結婚する」
学生の頃から芹奈はそう言っていたが、やがて27歳になり、内心では結婚なんて無謀だと感じるようになっていた。
彼氏は問題なくできるのだが、これまでの交際期間の最長記録がなんと3ヶ月なのだ。
芹奈は実際、よくモテる。
白い肌に、美人とも可愛いとも表現できる整った顔立ち。人の話によく笑い、人なつっこいところがモテる理由だろう。
だから、少しでも自分の理想に近い人から言い寄られてしまうと、相手に可能性を感じて付き合ってしまうのだ。けれども、結局相手を好きにならないので、数ヶ月で破局してしまうパターンばかり繰り返していた。
友達からは「芹奈は、理想が細かすぎ。全部満たす人なんて滅多にいないから」と、いつも言われてしまう。
正直、自覚はある。理想の相手の条件が細かく決まりすぎていて、本当にこの人だと思える人が見つからないのだ。
でも、今、ようやく現れた。
『瑛太』は、芹奈の理想を満たしている。
― もし既婚者だったり彼女がいたりしたら、謝って身を引こう。メッセージが返ってこないこともあると思う。でも、もし返信があってフリーなら、絶対に彼を手に入れる!
メッセージを送ってから4日後、彼から返信が来たのだ。
この記事へのコメント
あんな文章送ったら速攻削除されるかと…
題名を見たときに一瞬、盛りブラと見えたのは私だけでしょうかw
美ごもり連載でブラトップの話も有ったからか😆