「相手にとって完璧な人」でありたい—。
恋をすると、本当の姿をつい隠してしまうことはありませんか。
もっと好かれようとして、自分のスペックを盛ったことはありませんか。
これは、恋するあまり理想の恋人を演じてしまう“背伸び恋愛”の物語。
― ああ、どうしよう。やっぱカッコいい…!
芹奈はパソコンの画面越しに映る彼の姿を見て、思わず手をぎゅっと握る。
待ちに待ったZoom飲みが、始まろうとしていた。
◆
時はさかのぼること、2週間。
新卒で入った大手製菓メーカーのマーケティング部に勤めている芹奈は、新作チョコレートの販売戦略企画を担当している。
「最近話題のワーケーションに伴う、新たな販売戦略を考えて欲しい」
ある日、仕事の会議で上司からこう言われたのだ。
― ワーケーションってよく聞くけど、周りにやってる人いないんだよなあ。
そこで、ワーケーションをしている人たちが実際にどんな生活をしているのか、調べてみようと思ったのだ。
雑誌やネットの記事を読み込み、ワーケーションについて理解を深める芹奈。
仕事を終えた夜、SNSでも気になったのでプライベートのInstagramをひらき『#ワーケーション』で検索してみる。
ベッドで寝そべりながらスクロールしていると、ある1枚の写真が目に留まった。芹奈は思わず指を止め、その写真をタップする。
広い海が一望できる、眺めのいいベランダ。ミニテーブルにあるMacBook。その上に置かれた、指が長い綺麗な手。
その写真には、文章が添えられていた。
『伊勢志摩に来て、もう半年。東京の友達に忘れ去られないように久々の投稿。#ワーケーション』
芹奈は、男性の綺麗な手に目がない。うっとりして半ば無意識に、その写真の投稿主をタップした。
この記事へのコメント
あんな文章送ったら速攻削除されるかと…
題名を見たときに一瞬、盛りブラと見えたのは私だけでしょうかw
美ごもり連載でブラトップの話も有ったからか😆