SPECIAL TALK Vol.80

~ひとりでとことん建築に没頭した6年が、建築家としての存在意義を見出した~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。

万博の会場デザインが進行中。多くの人が気持ちを乗せられる建築を目指す

金丸:現在は、どのようなプロジェクトを手掛けていらっしゃるのですか?

藤本:最も大きな仕事は、大阪・関西万博の会場デザインです。

金丸:そうなんですか!?それは本当に大仕事ですね。

藤本:大阪の方々は、やっぱりいいですね。「よっしゃ!やったろっ!」という気概を感じます。

金丸:私は中学まで大阪で育ったので、よく分かるんですが、大阪人は基本的には結束しないんです。でもお祭りのときは例外で。

藤本:そうなんですか(笑)。でも結束したときの強さは、本当にすごいですよ。

金丸:99%は結束しないけど、結束した1%のときは、すごい力を発揮する(笑)。

藤本:実は去年の暮れに、万博の会場デザインを発表しました。会場の上にリング状の大屋根をつけて、これをメインの道線とし、楽しく歩き回りながらすべてのパビリオンにアクセスできるようにしました。万博の「非中心・離散」というコンセプトに沿って、多様でありながらひとつであることを意識したデザインにしたことを伝えたところ、地元の財界の方も「あ、これだよね」「これだったらいけそうだ」と仰っていただいて。

金丸:藤本さんのデザインの上に、関わる人たちの気持ちが乗っかったんですね。

藤本:そうですね。それが嬉しくて。建築にはアートとしての側面もあるので、そこで人びとがどのように過ごすかは、私にとってすごく重要なんです。それに万博ですから、「よし、これなら行ける」と思ってもらえるデザインを提案できたことも、第一段階としては成功だと言えます。もちろん開催までの4年の間には、いろいろと大変なこともあるでしょうけど。

金丸:藤本さんのお話を伺っていると、日本政府の弱点が見えてくるように思います。行政の中核を担っているのは、ほとんどが都会の中高一貫校を卒業し、現役で名門大学に入った人たちです。つまり、藤本さんのように田舎のリアルを見てきたわけではないし、ましてやふらふらと寄り道をした経験なんてない。そんな人たちが果たして、地域創生なんてできるのか疑問です。

藤本:これからの時代、何をするにしてもやはり多様性は必要かもしれません。

金丸:今日はいろいろな発見がありました。子どもを持つ読者の皆さんには「30歳までは我慢して、子どもを信じて仕送りをしてください」と伝えたい(笑)。最後に若い人たちに、藤本さんからメッセージをお願いします。

藤本:私の経験から言わせてもらうと、常に楽観的でいることは、とても大事だと思います。6年間ひとりでも特に塞ぎ込むことなく、「まあ、なんとかなるんじゃないかな」と思っていられたのは、ある種の才能じゃないかなと。

金丸:でも最初のうちは「面白くない」と言われたくなくて、ビビっていたわけでしょ?

藤本:たしかにそうですが(笑)。直近のリアルな状況というより、長期的に楽観的であることが重要なんでしょうね。結果論ですが、事務所に勤めずひとりでずっといたことで考える時間が生まれ、それが今につながっています。だから、どんな時間も無駄ではないことは間違いありません。

金丸:未来に対して楽観的であることは、とても重要だと思います。「未来を信じられる」ということですから。悲観的な人はまだ来てもいない、どうなるか分からない5年後を怖れてチャレンジをしない。こんなにもったいないことはありません。これからも藤本さんのご活躍に注目したいと思います。まずは大阪・関西万博が楽しみですね。今日は本当にありがとうございました。

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