2021.05.21
SPECIAL TALK Vol.80“潜伏”しているうちに、強さを手に入れていた
藤本:だからといって、そのあといきなり仕事が増えるようなことはなく、黙々と依頼をこなし、スタッフがひとり増えふたり増えという感じで続けていました。
金丸:いまや世界で活躍されていますが、海外での最初のお仕事はなんだったのですか?
藤本:2013年のロンドンです。ケンジントン・ガーデンズにサーペンタイン・ギャラリーがあります。建物の前にはきれいな芝生の公園があって、20年くらい前から毎年ひとりの建築家が、そこに夏の4ヶ月間、サマーパビリオンを建てるんです。女性建築家のザハ・ハディッドさんをはじめ世界の名だたる建築家が担当してきたのですが、2013年から若手建築家にチャンスを与えるようになりました。その第1号が私です。
金丸:素晴らしい。どのような作品だったのですか?
藤本:半透明の大きなジャングルジムのような建物です。芝生の緑が青空に溶け込むようなものにしたかったので、2センチくらいの鉄の棒を雲のように組み合わせた設計にしました。その設計自体も評価してもらえましたが、中に入るとまた面白いんですよ。段々畑みたいな構造になっていて、いろいろなところに座ってくつろいだり、散策したりすることをできるようにしました。
金丸:お話を聞いているだけでワクワクしてきます。
藤本:単に奇抜なものを作るだけではなく、建物の中で過ごすことも含めて評価いただけたのだと思います。
金丸:ギャラリー側の期待に藤本さんは見事応えたのですね。
藤本:本当にありがたいことです。依頼を受けてからは、パビリオンが完成するまで、ときには大喧嘩みたいになりながらギャラリーと何度もやり取りしましたね。最後はハッピーエンドでしたが。
金丸:大喧嘩ですか(笑)。
藤本:はい。当時は館長が男性と女性のふたりいて、互いにいいものを作りたいものだから、妥協なしで本気でぶつかり合って。
金丸:藤本さんもすごいですが、ギャラリー側も立派ですね。無責任な発注者であれば任せちゃいますから。でも、そこで本気でやり取りするようなガッツが藤本さんの中にあったというのは、これまで伺った話には出てきませんでしたけど(笑)。
藤本:ふらふらしているうちに、どこかで開き直りが起こったんですかね(笑)。
金丸:失うものがないというか、自分を見つめるうちに芯が見つかって、あとは信念に従ってやるだけ、ということなんでしょうね。
藤本:ロンドンのサマーパビリオンのあとは、海外からもコンペのお誘いをたくさんいただくようになりました。
金丸:ということは、海外にも活動拠点があるのですか?
藤本:東京とパリに事務所があります。6、7年くらい前にパリからコンペのお誘いをいただき、当時たまたまフランス人の女性スタッフがいたので参加したところ、選ばれました。
金丸:すごいですね。コンペに強いじゃないですか。
藤本:いやいや、めっちゃ負けてますよ(笑)。10回出して1回通るくらいです。
金丸:でも、10回出すこと自体がすごいですよ。1回負けたくらいで白旗をあげていたら、世界では戦えないですから。
藤本:フランスは一度懐に入ると、すごく温かくしてくれる土地柄なんです。だから新しいプロジェクトも増えたし、事務所を置こうかと。コロナ前までは月に1回はパリに行っていました。
金丸:事務所の最初のスタッフも、藤本さんがこれほど活躍するとは想像してなかったんじゃないですか?
藤本:それが、最初のスタッフというのは、実は私の妻なんです。
金丸:ええっ!?そうなんですか?
藤本:潜伏期間が終わって2、3年くらいたった頃、そろそろスタッフを雇おうかなと募集したところ、応募してきたのが彼女で。事務所でずっと一緒に過ごすうちに自然と付き合うようになり、そのあともしばらくは、ずっとふたりで仕事をしていました。
金丸:いやあ、いい話ですね。奥さまも建築の素養がある方ですか?
藤本:はい。設計スタッフとして入ってきましたから。
金丸:では、藤本さんの作品には奥さまのアイデアも練り込まれていると。
藤本:ふたりで話しながら設計していきますからね。まだ結婚する前でしたけど、妻の実家も私が設計しました。建物が完成して、「さすがにこれは結婚っていうことだよね」と結婚しました(笑)。
金丸:ちなみに今は、スタッフは何人いらっしゃるんですか?
藤本:東京は50人ちょっと、パリは30人くらいです。
金丸:その礎を奥さまと二人三脚で築かれたのですね。6年間もひとりで放浪していた話が吹っ飛ぶくらい、本当にいいお話です(笑)。
藤本:妻にも両親にも感謝しっぱなしです(笑)。
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