2021.05.14
柳 忠之のこの12本におまかせ Vol.6美味しいワインをおうちで嗜む時間は、この上なく至福だ。
だからこそ、ワイン選びには妥協したくない。
そんな大人に知ってほしい極上の1本を、ワインの達人がピックアップ。
きっと、あなたのおうち時間の充実度も変わるはずだ!
◆
シラーズよりも今、注目はグルナッシュ
柳「おや、クラリン(編集担当の嵩倉)。テニスラケットなんか持ってどうしたの?」
――あっ、柳さん。2月に、大坂なおみが全豪オープンで2度目の優勝を果たしたじゃないですか。それで、この春からテニスに挑戦してみようかと。
柳「ほう、これまでの経験は?」
――私、卓球なら誰にも負けない自信があるんですけど、テニスはからっきしなんですよ。
柳「おやま。」
――それはともかく、全豪オープンつながりで、今回のお題はオーストラリア。オージーワインといったらシラーズですよね?
柳「さすがこのページの編集担当、よく知ってるね。一般的な品種名でいうところのシラー。オーストラリア最高峰の「グランジ」をはじめ、この国を代表する品種であることは間違いない。
けれど、今僕が注目しているのは、マクラーレン・ヴェイルのグルナッシュだな。」
――ほぉ、そりゃまたどうして?
柳「1838年に初めてブドウが植えられたマクラーレン・ヴェイルはオーストラリアでも有数のワイン産地だけど、すぐ北に位置するバロッサ・ヴァレーの陰に隠れて、いまひとつパッとしない。」
――私もバロッサ・ヴァレーは知ってますけど、マクラーレン・ヴェイルは初耳です。
柳「ここもシラーズからなかなか良いワインができる土地なんだが、海寄りのマクラーレン・ヴェイルは、内陸のバロッサとは気候条件が違うんだな。」
大坂なおみのごとき、力強さとしなやかさのあるワイン
――なんだか難しい話になってきましたね。
柳「結論から言うと、マクラーレン・ヴェイルはシラーズよりもグルナッシュの方が向いている。この品種はもともとスペイン生まれで、地中海沿岸の各地に広がった。
例えば、フランスのローヌ地方でも内陸にある北のコート・ロティやエルミタージュはシラー、地中海に近い南のジゴンダスやシャトーヌフ・デュ・パプはグルナッシュが花形品種だ。」
――なるほど、それで海沿いのマクラーレン・ヴェイルはグルナッシュの銘醸地というわけですね。
柳「それにマクラーレン・ヴェイルにはまだ古木が残っていて、それが良い仕事をしてくれる。ピラミマの「オールド ブッシュ ヴァイングルナッシュ」は若くても樹齢50年、古いのは80年近い。
グルナッシュは下手に育てるとただアルコールばかり強くて、中身はへろへろなワインになりかねないけど、力強さとしなやかさを兼ね備えたこのワインは、まさにグルナッシュの大坂なおみだ。」
肉を頬張って、豪快にワインで流し込みたい!
―― おお!で、何と一緒に楽しめば?
柳「ずばり、ジンギスカン。ハーブやスパイスの風味がぴったし。」
――このワインを飲めば、テニスが上達しそうな気がしてきました。
柳「クラリン、単純すぎる……。」
「PIRRAMIMMA OLD BUSH VINE GRENACHE(ピラミマ オールド ブッシュ ヴァイン グルナッシュ)」
ピラミマは1892年創立の老舗ワイナリー。アメリカンオークの樽で3年熟成させたこのワインは、メロウな味わい。〈3,740円/ヴァイ・アンド・カンパニー TEL:03-3779-2123〉
編集部員・嵩倉が飲んでみた!
今月のワインが届いた日は、初夏のようないい陽気。思わずグラス片手にテラスに飛び出しました!
ひと口飲めば、ベリーを頬張ったようなジューシーさ。太陽の恵みを存分に感じ、力みなぎる一杯でした。
◆
教えてくれたのは
ワインジャーナリスト 柳 忠之氏
世界中のワイン産地を東奔西走する、フリーのワインジャーナリスト。迷えるビギナーの質問に、親身になって答えるワインの達人。
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