2021.04.21
SPECIAL TALK Vol.79自分が本当にやりたいことを、求めれば枠から抜け出せる
金丸:ところで、スプツニ子!さんは、自分自身でまず計画を立て、目的に向かって戦略的に進むタイプですか、それともまずは動いてみて、その結果から次のアクションを起こすタイプですか?
スプツニ子!:私自身はこれまでかなり計画的に動いてきたと思っています。周りにはそう見えないかもしれませんが(笑)。でも先に何をやりたいのかを決めて、そのあとプロセスや手段を考えますね。ビジネスの世界も同じだと思いますが、先に「自分は本質的に何をやりたいか」から考えると、枠から抜け出せる気がするんです。人って「アーティストの仕事とはこういうものだ」とか「科学者という職業は、こういうことをやるべきだ」という枠にとらわれてしまいがちじゃないですか。
金丸:それはよく分かります。失われた30年とよく言われますが、日本の多くの企業が前例を踏襲するばかりで、自分たちの本業やサービスの価値を再定義できず、この激しい時代の変化に対応できずに力を失っていったように思います。先程ご両親が来日されたのは、1981年だと伺いました。この年は16ビットパソコンのIBM PCが発売された、私にとっては忘れられない年です。
スプツニ子!:コンピュータの転換点のひとつですね。
金丸:それまでは日本のメーカーも、世界でそれなりに戦っていました。しかし、IBM PCが誕生し、潮目が変わった。それまで主流だった大型コンピュータから、性能は劣るけれど小型で安価なパソコンへ、雪崩を打つようにユーザーが流れっていったんです。しかし、日本メーカーは「あんなものは主流にならない」と高をくくり、大型コンピュータにこだわり続けた。枠にとらわれすぎた結果、競争力を失いました。
スプツニ子!:日本企業にありそうな話ですよね。高い技術力はあるのに、マーケティングが苦手で、アウトプットを間違えてしまう。
金丸:それは経営者の責任です。ほかの企業と違う切り口で戦うのではなく、自分たちと似たような企業の動きをみて、同じことをやろうとするから、イノベーションが起こせない。非常に残念なことです。
アートと科学を融合させ、問いかけ続けたい
金丸:一見突飛に思える作品をつくりながらも、その背景にはしっかりした問題意識があって、自分の感情に素直な部分もあれば計算して行動もしている。スプツニ子!さんはアーティストと科学者という立場を使い分けているというより、融合しているような印象を受けます。
スプツニ子!:本質的にはアーティストだと思っていますが、バックグラウンドや思考回路はものすごく理系です(笑)。ジェンダー関係でいろいろと発言を求められる機会が多いのですが、私は他の文系のスピーカーと比較して、データを引っ張ってきて現状のバイアスを説明するのが得意だなと感じることがよくありますし。
金丸:理系として訓練を受けたおかげですね。先程の低用量ピルとバイアグラの話も「かたや30年、かたや半年」というデータを突きつけられると、説得力が増します。
スプツニ子!:そうなんですよ。具体的なデータがないまま話をすると、どうしても主観的な意見に思われてしまって、正しい主張なのに理解してもらえなかったり。でも客観的なデータを見せれば、日本のジェンダーギャップを誰もが認識できると思います。
金丸:ところで、理系的思考とアート的思考のバランスを、どのように取っているのですか? アートは右脳的なものですよね。左脳的なロジカルシンキングだけで作品をつくると、アナロジーっぽい要素がなくなり、面白みが薄れてしまいそうに思えますが。
スプツニ子!:アートには答えが出ないような問いを投げかける、という側面もあるじゃないですか。たとえば「命ってこういうものじゃないか」とか、「人類とは何か」「生きるとはどういうことか」みたいに。一方、科学の世界でも同じような問いが盛んに議論されています。AIがどんどん発達して人間を超えた知能レベルになったらどうなるのだろうとか、ゲノム編集による能力拡張は是か非かとか。
金丸:たしかに、明確な答えがあるわけじゃありません。
スプツニ子!:私は理系が大好きで、プログラミングも得意ですが、「テクノロジーが発展すると、未来はこういう世界にもなり得るんじゃないか」と妄想してきたことを、アーティストとして作品に昇華させている、という感覚です。
金丸:ファクトベースで理系的に現実を把握し、それを基に右脳で未来を考えてメッセージを込める、ということなんですね。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2025.02.21
Vol.125
~卒業して気付いた「まだまだ何でもできる」。元アイドルの肩書に縛られず、自由に挑戦を続けたい~
2025.01.21
Vol.124
~丹後を日本のサン・セバスティアンに。地方の「お酢屋」がまちづくりを考える~
2024.12.20
Vol.123
~モデルから放送作家へ。異色の経歴は恐れずに踏み出した証拠~
2024.11.21
Vol.122
~自分の体を認めることが、自分を好きになるための第一歩になる。~
2024.10.21
Vol.121
~スポーツの喜びをより多くの人が体験できるよう、これからも挑戦はやめない。~
2024.09.21
Vol.120
~日本の農業が続くための仕組みを作り、アップデートできるよう挑み続ける~
2024.08.21
Vol.119
~すべてを制覇したい気持ちは変わらない。経営陣になっても燃えたぎる闘志がある~
2024.07.20
Vol.118
~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~
2024.06.21
Vol.117
~1杯で幸せになる利他的なコーヒーを目指して~
2024.05.21
Vol.116
~多くの人の期待と希望を背負う街づくりほど、面白い仕事はない。~
おすすめ記事
2021.03.19
SPECIAL TALK Vol.78
~やりたいことがやれる人を増やす。自動収穫ロボットで農業を変え、世界を変えたい~
- PR
2025.02.27
とろっとろのフォアグラグラタンに悶絶!冬のごちそうを求めて青山へ行こう
2015.02.05
絶対に負けられない接待が、今宵はある
絶対に負けられない接待が、今宵はある:『琥珀宮』編
2016.09.30
年末に向けてマスターしよう!これが接待を制するとっておきレストラン8選
- PR
2025.02.26
“自宅で鮨”は「握る」がトレンド!ホムパを格上げするプレミアムすし酢とは
- PR
2025.02.28
【潜入取材】ニセコの雪上VIPラウンジで乾杯!ラグジュアリーテキーラの真髄を体験してきた!
2016.12.05
接待の猛者10人がリアルに体験!「私の大成功&大失敗した接待」
2016.10.17
彼が言うなら間違いない!松岡修造が伝授する“デキる人”になるための10ケ条
2015.11.03
見よこの熟成牛タン!出張族が仙台で足を運ぶ地元の名店3選
2016.05.19
この手があった!1か月超ステイなら高級サービスアパートメントという選択肢
東京カレンダーショッピング
『かに物語』:〆まで楽しめる雑炊の素付き!蟹の旨みがたっぷりと溶け出すかに鍋セットミニ
『肉のABCフーズ』:黒トリュフ塩付!牛タン&A5ランク黒毛和牛を使った極上ハンバーグ
『東京京橋おばんざい醸』:肉を引き立てる3種の塩!A5黒毛和牛を使ったローストビーフ
『かに物語』:海老・帆立・蟹!ベシャメルソースに、各種海の幸をトッピングした贅沢グラタン
『UMIKARA』:薄切り・厚切り食べ比べ!特製出し汁で味わう若狭湾真鯛の鯛しゃぶセット
『パンツェロッテリア』:具材ごろごろボリューミー!フレッシュな野菜と肉感満載のフライドピッツァ
『オリベート』:黒トリュフ香る、口当たりクリーミーな究極のティラミス
『ミホ・シェフ・ショコラティエ』:日本を代表するショコラティエ―ルが作る、 ショコラ好きのための濃厚ガトーショコラ
『LOUANGE TOKYO』:アート感溢れるビジュアル!口溶けなめらかな大人の生チョコレートエクレア(6種)
『ル・ボヌール 芦屋』:しっとりサクサク!フリーズドライ苺にホワイトチョコをたっぷりと浸透させた新感覚スイーツ
ロングヒット記事
2025.02.27
TOUGH COOKIES
「実は彼と…」32歳女が、抱える秘密。高校時代からの親友に言えずにいる“あの夜”のこと
2025.02.24
1LDKの彼方
29歳彼女と同棲しているのに、将来を考えていない男。結婚を迫られた彼がとった言動とは
2025.03.01
男と女の答えあわせ【Q】
家賃25万円の1LDKに同棲する場合、いくら負担する?女が34歳彼に抱いた違和感とは
2025.02.26
運命なんて、今さら
「彼女の通話履歴を見て…」28歳男のヤバい行動。爽やかエリート社長の裏の顔とは
2025.03.02
男と女の答えあわせ【A】
「家賃と光熱費の負担は…」恋人間のお金問題に、スプレッドシートを作成する34歳男に困惑