SPECIAL TALK Vol.79

~枠にとらわれず、やりたいことをやる。アートと科学の融合で夢想した未来を現実に~

日本の学校が合わず、趣味も理解してもらえなかった

金丸:お生まれはどちらですか?

スプツニ子!:東京の新宿区です。戸山町という早稲田大学の近くですね。母はイギリス人で、日本人の父とイギリスで出会い、結婚して日本に来ました。

金丸:イギリス人の女性が好きになる日本人の男性って、どんな方なのか気になります。

スプツニ子!:変わり者ですね(笑)。両親とも数学者なのですが、父が研究のため渡英してマンチェスター大学に赴任し、そこで唯一の女性数学教員だったのが、母でした。

金丸:では、紅一点を口説き落とした。すごい競争率だったんじゃないですか?

スプツニ子!:母は美人だし研究も優秀で、結構モテていたそうです(笑)。イギリス人の男性からみると、母は高嶺の花だったみたいで。日本人の男性は白人女性に対して気後れする人が多いと思いますが、その点、父は空気を読まないタイプなので、全然気にせずアタックしたようです。

金丸:空気を読むな、当たって砕けろ、ということですね(笑)。イギリスに住むという選択肢もあったと思いますが、お母さまは日本を選ばれたんですか?

スプツニ子!:母もチャレンジャー気質なので、今の中国のように高度成長を続ける日本を「楽しそうだ」と感じたみたいです。1981年に日本に移り住みました。

金丸:まだ日本が誇りを持っていた頃ですね。小学校はどちらに?

スプツニ子!:地元の東戸山小学校です。家から一番近い公立小学校ですね。土地柄、中国や韓国、フィリピンなど、アジア系の子どもたちも多く通っていました。

金丸:小学校は楽しかったですか?

スプツニ子!:いや、全然合いませんでした。

金丸:やっぱり(笑)。日本の学校教育は「普通であること」「平均的であること」を子どもたちに求めます。協調性が求められる世界に、スプツニ子!さんはなじまないでしょう。

スプツニ子!:正直しんどかったですね。私の世代だとまだ体罰もあって、忘れ物をした罰としてうさぎ跳びをさせられたり、給食の牛乳が飲めるまでクラス全員立たされたり。先生がみんなの前でクラスメイトのひとりを殴ったり。

金丸:私も昭和的な学校の価値観とは、相容れない性分でした。私のことを腫れ物に触るかのように扱う先生もいましたよ。

スプツニ子!:あと、クラスメイトから「外人!」とめちゃくちゃいじめられました。

金丸:えっ、そうなんですか?

スプツニ子!:アジア系の子はいても、外見が明らかにミックスなのは私だけなので、ほかの子にとって私は異質な存在だったんです。

金丸:それはつらかったのでは。

スプツニ子!:だから中学校からインターナショナルスクールに通ったのですが、それがまた合わなくて。というのも、私はコンピュータが大好きなギークだったのですが、その中学はいわゆるお嬢様系の学校で。

金丸:話の合う友達がなかなか見つからなそうです。ところで、子どもの頃から自宅にコンピュータがあったんですか?

スプツニ子!:はい。そこは数学者の両親に感謝しています。6歳のときに「パソコンで遊んでいいよ」と言われて、初めてパソコンに触れました。中学1年生のときにプログラミングを始めて、HTMLやCSSでウェブサイトをつくったり、VISUAL BASICでゲームをつくったり。中3のときにはC++やJavaも書き始めましたね。

金丸:素晴らしい。話は戻りますが、高校はどうしたのですか?

スプツニ子!:高校からアメリカンスクールに通ったんですが、困ったことに、そこでもノリが合わないんですよ。まさに『ビバリーヒルズ高校白書』の世界観で、人気者の男子はアメフト、女子はチアリーダーみたいな(笑)。一方で私は引き続き数学や物理、コンピュータが大好きで。

金丸:いかにもアメリカンな世界ですが、それだとなじめないでしょうね。

スプツニ子!:理数系の勉強が好きすぎたので、多分気持ち悪がられていました。周りからは浮いているし、学校はつまらないし。早く大学に行きたいなと思っていろいろ調べるうちに、自分の成績なら飛び級できることが分かって、逃げるようにしてイギリス版のMITと言われる理系大学、インペリアル・カレッジに進学しました。

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