ヤドカリ女子 Vol.3

「家に帰りたくなくて、男の家を転々と…」真実を打ち明けた女が見た、後輩男子の意外な反応

「…もしかして今日、誰か来る予定だった?」

床には服も書類も落ちていない。ダークブラウンのローテーブルには、テレビのリモコンが置いてあるだけだ。

行儀よくクッションが並ぶソファの足元には、グリーンのラグマットが敷かれている。ネイビーを基調としたベッドはメイキングされ、今すぐ飛び込めそうだった。

あんながよく行く男の家も、きちんと整頓されていることが多い。だがそれは、女を泊めるために片付けているからだと思っていた。

「いえ、全く。何でですか?」
「いや…」

マナー違反だと思いつつ部屋中を見回しても、段ボールはないし空き缶も転がっていない。橙色の間接照明が、少しの洒落っ気を演出している。

「部屋がすごく綺麗だから。彼女とかのために片付けたのかなって」

あんなの言葉に、祥吾はジャケットをハンガーにかけながら首を振った。

「僕が、残業で疲れて帰ってくる僕のために片付けました」

あんなは「へえー…」としか返せなかった。間取りも広さも、何なら家具の配置だって同じようなものなのに、この差は一体何だろう?

「綿谷さん、とりあえずよかったら座ってください」

祥吾に促され、あんなは我に返った。分析するあまり、部屋のど真ん中に突っ立ったままだったのだ。慌ててスプリングコートを脱いで丸め、ソファに腰を沈める。


「こんな時間ですけど、ご飯食べました?」
「そういえば、ランチから何も食べてないかも」

今朝からの出来事に思いを馳せる。感情がジェットコースターのように上下する、長い一日だった。胃がキリキリと痛む。

「軽く食べるんで、よかったら一緒にどうですか」
「えーっと、じゃあ頂......


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