乗れるものなら、玉の輿 Vol.2

「男なんて単純よ…」イケメン経営者を落とすため、インスタのストーリーを活用する女の手口

公立高校に通っていた頃の小春の髪は、ブリーチを繰り返して金髪に近いベージュだった。校則など存在しないような自由な学校だったし、高校生だから許される全てのことをやっておきたかったのだ。

だから、私立の女子大に進学したのを機に髪の色をダークブラウンにした。

小春の通っていた女子大は、小学生からエスカレーター式に上がってきた内部進学のお嬢様も多くいる学校だった。彼女たちと仲良くするために、まず、見た目を彼女たちに合わせることから始めた。

彼女たちと仲良くなれば、医師や弁護士、経営者などハイクラスな男性との食事会にも呼んでもらえる。

そんな打算もあった。

しかし、裕福な家庭で育った彼女たちと付き合うことは、想像以上に大変だった。

時計は、ベゼルにダイヤが施されたロレックス。通学バッグは、エルメスのガーデンパーティーかシャネル。女子会は、会員制のレストランで開催され、デパートでは当たり前のように外商がつく。


入学早々、彼女達と本当の意味で仲良くなるには、お金も努力も必要だと痛感する。

そこで小春は、六本木のカフェでバイトを始めた。カフェと言っても、客とビュッフェを食べながら話す形態の店だ。

カジュアルな服装でもOKという気軽さは良かったが、座って接客するのに2,000円という時給は安すぎて、すぐにドレス着用の西麻布にある会員制の店に移った。


当時の小春の時給は、9,000円を超えていた。

身につけているお気に入りのフランク・ミュラーのロングアイランドは、小春が店を辞める時に、一番の太客がくれたもの。

コミュニケーション能力や、男を見る目、それから女としての自信や、可憐な仕草。小春は、あたかも最初から持ち合わせていたかのように、着々と装備していった。

その甲斐あって、その頃大学の友人たちが開いてくれた食事会で、小春が1番人気になるのに時間はかからなかった。

それもそのはず。バイトなどしたことのないお嬢様より、大人の男性を楽しませる会話を日々模索して、指名数を増やし続けた小春が勝つのは、至極当然のこと。

バイトは卒業と同時に辞めたが、その時学んだテクニックは、社会人になってからも有効だった。その証拠に、社内や食事会などで狙いを定めた男性からは、すぐに反応がある。

こちらからガツガツとアプローチをしなくても、相手の心をくすぐっているからだ、と自己分析している。

恭介のように有名な経営者相手でも、小春はひるまない。彼に対しても、ちゃんと次の作戦を用意している。

祐馬は、顧客の個人情報は教えられないと言っていたが、今はSNSの投稿1つで、なんでも分かる。恭介が住んでいるマンションを絞り込むことは、簡単だった。

祐馬が働いている美容院は、メンズカットで有名な店で新宿駅東口の台湾カフェの近くにある。Instagramにあがっている写真やSNSの情報から、恭介は新宿のタワマンに住んでいると予測した。

ー新宿でタワマンなら、西新宿か東新宿よね。でも、何台も車を所有しているから、東新宿の方かな。

小春は、一か八か、東新宿の方に賭けた。

そして、とある作戦を立てながら眠りについた。

この記事へのコメント

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No Name
毎日品川から東新宿までインスタ ストーリーのために通うとか、ご苦労様。
2021/02/13 05:3599+返信3件
No Name
まさかマニュアル車でも運転できるのか
に笑った。
2021/02/13 05:3399+返信2件
No Name
エルメスのガーデンパーティーか
シャネル
の何? と思っちゃった。

でもこのライターさんの文章は読みやすい!
2021/02/13 05:2783返信14件
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