SPECIAL TALK Vol.75

~あらゆる分野と繋がるワイン産業から日本の問題点を洗い出す~

マーケティングや流通。日本のワインが抱える課題

辰巳:僕は、日本人のワインの好みはもっと多様化したほうがいい、と思っています。もったいないじゃないですか。日本をはじめ、イタリアやスペイン、オーストリアやスイス、ギリシャなど、おいしいワインはいくらでもある。それなのに少し高級なお店だと、フランスワインしか扱っていないところも多くて、ちょっと悲しくなりますね。もっと各国のワインを取り揃えてほしいなと。

金丸:ひょっとすると、お店の方も日本のワインのおいしさをあまり知らないのかもしれません。それこそ、辰巳さんの出番ですよ。たとえば、辰巳郎プロデュースでペアリングを提案するなんて、どうですか?

辰巳:なるほど。やらせてもらえるなら、全部リストを作ってもいいです。

金丸:何か文句があったら、「辰巳さんに言ってください」と(笑)。

辰巳:全然構いませんよ(笑)。

金丸:きっと、お店から提案されて「えっ、日本のワイン?」と半信半疑で飲むのと、「辰巳さんのお薦めだから」と思って飲むのとでは、全然違うと思いますよ。ところで、辰巳さんの「今様」をいただいてもいいですか?

辰巳:もちろんです!ロゼのスパークリングで、辛口に仕上げています。2015年のものなんですが、ようやく熟成が入ってきました。

金丸:ん!おいしい。面白い味わいですね。

辰巳:面白いでしょう(笑)。世界中どこにもないワインを造ることを目指していますから。

金丸:スパークリングにしたのはなぜですか?

辰巳:華やかだし、僕自身、スパークリングが好きで。ぶどうは「甲州」と「山ぶどう」を使っています。

金丸:華やかさのなかに、パンチがありますね。

辰巳:山ぶどうの凝縮感と酸味ですね。甲州やマスカット・ベーリーAだけでなく、山ぶどうにも「小公子」や「山幸」「山ソービニオン」など、いい交配種が生まれています。

金丸:日本の気候があるからこそ、日本のぶどうが育つ。その土地だからこそ生まれるワインには、何ともいえない魅力があります。

辰巳:一方で、日本ワインの問題点は、流通の悪さにあります。まず生産する本数自体が少ないし、利ざやが小さいので、酒屋さんが扱いたがらないんです。輸入ワインの仕入れ値はだいたい6掛けですが、日本ワインはよくて8掛けですからね。

金丸:そんなに違うんですか。だったら、日本ワインの値段をもっと高くしないと。

辰巳:それが「高くすると、これまで飲んでくれた地元の人たちに申し訳ないから」とおっしゃる生産者の方が多いんです。

金丸:ならば、地元の人には「地元割」をつけてあげたらいいじゃないですか?

辰巳:そうですよね。実際にワイナリーに足を運んでくれた人には安く提供するとか、方法はいろいろあるはずです。酒税の撤廃も、ひとつの案だと思います。

金丸:なるほど。

辰巳:というのも、ワイナリーは零細企業がほとんどで、家族経営だったり、たったひとりで造っていたりするケースも少なくありません。それに加えて、酒税関係の膨大な書類作りや役所からの細かい指導に対応しなければならない状況です。もっと、いろいろな発想を持って自由に、ワイン造りに集中できる環境を整えることが、ワイン産業の発展に繋がるのでは、と思っています。

金丸:私は以前から、国税庁が酒類の担当省庁という点がずっと引っかかっています。ワインはぶどうから造るから、農林水産省が担当したっていいはずです。

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