復讐 Vol.1

復讐:音信不通になって3週間。偶然街で見かけた親友の信じられない状況

『真由子:最近忙しい?近々、また飲もうよ!』
『愛菜:ごめん、最近仕事が忙しくてバタバタしてるの。また連絡する!』

愛菜の仕事は広告代理店の受付。連絡が取れないほど受付の仕事が忙しいって、果たしてどんな状態なのだろう。

そんなLINEを真に受けるほど、私もバカじゃない。すぐに嫌な予感が働いた。

―でも、そんなハズない…。

愛菜程度の女に、あんな素敵な男性がアプローチするわけがない。

私も愛菜も似た者同士だけれど、どっちかといえば、私の方が可愛い。私の方がモテてきたし、恋愛経験も多い。生活レベルから見るに、私の方が給料も高いはず。

涼真は、そんな私が奇跡的にお近づきになれた男性なのだ。私以下のレベルの愛菜に恋するなんてこと、あるはずがない。

自尊心と平常心をどうにか保つため、私はそんな思考をぐるぐる巡らせた。

そして、2人との連絡が途絶えてから3週間が経った、クリスマスイブの夜。

私は同僚と会社帰りに食事をし、丸の内のイルミネーションを2人で見ながら帰路についていた。

「25歳のクリスマスイブに、女2人か~」
「別にいいじゃん!」
「まあね、悪くはない」

他愛もない会話をしながらも、脳内には愛菜と涼真の存在がべったりとへばりついている。

不快な疑念を拭い去ることができないまま、暖色系に染め上げられた東京駅の駅舎を、ぼんやりと眺めながら歩いていた。その時だった。

「…」

本当に驚いたときには声も出ないんだと、私はこの時はじめて知った。


私のすぐ前を歩いていたのは、愛菜と涼真だったのだ。

仲睦まじそうに、2人とも私には見せたことのない表情で見つめ合いながら、歩いている。

その距離感と空気感は、男女のそれ。一目見ただけですぐにわかった。

すぐ近くから私に見られているなんて、これっぽちも気づいていない。2人だけの世界に没入している。

シャンパンゴールドの光の中で、愛菜と涼真は手をつなぎ、ゆっくりと歩く。ドラマのワンシーンのようなその姿のすぐ後ろを、私は女友達と歩いている。

一歩、また一歩と歩みを進めるごとに、私の中で何かが壊れていく。

そして、ぶちっと鈍い音で、何かが切れた音がした。

―…許せない。絶対に許せない。

涼真が自分のものにならないなら、誰のものにもならないでほしかった。誰かのものになるなら、せめて圧倒的な美女とか才女とか、自分じゃ到底かなわない女に取られたかった。諦めがつくから。

―…なんで、愛菜なわけ?

同僚に気づかれないよう平常心を装い、いつもの笑顔を貼り付け、般若の形相を必死で隠す。いつもなら、奥深いところで眠っているこの顔が、体のすぐ表面にまで近づいてきている。表に出たがっている。

燃えたぎる炎を悟られないよう、深呼吸をして、怒りを吐き出す。そして、思い立ったのだ。

―そうだ。あの人だ。

私はすぐさまスマホを取り出し、はやる気持ちを抑えながら、震える手でメッセージを打ち込んだ。

すぐにその人物から返信があったことで、私の精神はなんとか平常心に少し近づく…。

―ねえ、愛菜。そんなことしておいて、許されるとでも思ってるの?おめでたい女ね。

何も知らないで、幸せそうに歩くその後ろ姿に、私は心の中で語りかけた。

私、決めたから。


絶対に許さないからね。


▶他にも:女の貯金額は、5,000万円。全てをつぎ込んで彼氏とクリスマスに逃亡しようとしたら、まさかの…

▶Next:1月3日 日曜更新予定
真由子が考えた、愛菜への復讐方法とは?

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この記事へのコメント

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No Name
好きな人横取りしたんか…
友達には紹介するもんじゃないな
2020/12/27 05:1299+返信13件
No Name
おもしろそうなやつキタ━(・∀・)━!!!
最終回の駆け足はナシでお願いしたい
2020/12/27 05:1799+返信6件
No Name
老舗料亭って、クリスマスイブの夜は暇なの?
2020/12/27 05:3870返信2件
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