東京戦略時代 Vol.3

自分の歓迎会を断固拒否。馴れ合いを嫌う合理主義の女が、寂しすぎて手を出したものは…

職場は、戦場だ。

出世争い、泥沼不倫、女同士の戦い…。

繰り広げられる日常は、嘘や打算にまみれているかもしれない。

そんな戦場でしたたかに生きる「デキる人」たち。

彼らが強い理由は、十人十色の“勝ち残り戦略”だった。

大手IT会社に勤務する25歳の花山 樹里は、そんな上司・同僚・後輩と関わりながら、それぞれの戦略を学んでいく…。

▶前回:「あの子、俺のこと多分好きだな」社内評価の高い男が、恋心まで利用する理由


「ふぅ…」

深いため息をつきながら、愛子がポータブル加湿器のミニタンクを持って立ち上がる。

その様子を隣の席から見ながら、樹里はボンヤリと思った。

ー愛子さんが片付けに入ったってことは…、もう定時10分前ってことね。

「じゃ、お先に。お疲れさまです」

タンクを洗って帰ってきた愛子は、高級そうなトレンチコートを片手に颯爽と去っていく。

愛子は毎日、18時の定時きっかりに帰宅する。その10分前には、加湿器の片付けを始めるのがルーティーンなのだった。

「あ、お疲れさまです」と樹里が小さく呟き顔をあげると、そこにはもう愛子の姿はない。

いつも通りの光景ではあったが、樹里だけは、ほんの少しだけいつもと違うところを感じ取っていた。

ー愛子さんって本当、クールで合理的。でも、いつも以上に無愛想だった気がする。やっぱ今日のミーティングのこと気にしてるのかしら…。



愛子は今から約1年前、上司・紗栄子率いるチームに異動してきた、樹里の同僚だ。

端正な顔立ちを生かしたナチュラルメイクと、クールで上品なパンツスタイル。左手に光る明らかに高級な指輪。

普通ならニコニコしながら自己紹介をするであろう場面でも、愛子はニコリともせずに淡々としている。

そんな愛子から樹里が受けた第一印象は、決して良いものではなかった。

ー私、この人とうまくやっていけそうにない…。

そのきっかけとなったのは、昨年末に起きたある”事件”だ。

【東京戦略時代】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ
Appstore logo Googleplay logo