2020.09.19
SPECIAL TALK Vol.72書は心の動きがそのまま反映されるアート
金丸:肉筆は上手か下手かを越えて、やはり心が伝わるものだと感じています。
中塚:印刷したものであっても、直筆でサインが入っているだけでうれしいですよね。というのも、文字は人柄が一番出やすいからだと思います。「絵は読むもの、字は見るもの」という言葉がありますが、絵はたくさんの工程を経て、自分のイメージをかたちにしていく。一方で、字は瞬間的に感情がバッと出てしまう。
金丸:たしかに、心が穏やかじゃないときに、丁寧に字を書くのは難しいですからね。
中塚:書家というと「ちゃちゃっと書いて、それが作品になるんだからいいね」と思われがちですが、でも余白のどこに点を置くか、1ミリ単位で印象ががらっと変わってしまいます。
金丸:印刷ではないから、同じ字でも完全に同じになることはありえませんよね。
中塚:その違いを生むのは心の動きです。だから、書から心を読み取ることができるんですよ。表面的なかたちだけでなく、リズムと筆の息遣いが捉えられると、印象も全然変わってきます。
金丸:その意味では、書は究極のアナログですね。『麒麟がくる』の題字を見たとき、飛び散っている墨にもきっと意味があるんだろうと思いました。まずは、安土桃山時代という戦乱の時代で活躍した武将たちの勇猛さを表現しているのかな、と。でも、よくよく見ると、「(安寧の象徴である)麒麟に来てほしい」と願う人びとの祈りのようなものも感じて。
中塚:そこまで読み解いていただけるなんて、とてもうれしいです!温かい人と人とのつながりも描かれている作品なので、人びとの心、あるいは涙といったものを間合いで表現できたらと思いながら作り上げました。
金丸:込めようと思えば、いろいろなものを込められるのが文字なんですね。だけど、日本の書道教育って、感性を刺激するようなものではなく、「お手本どおりに書く」ことが求められますよね。
中塚:たしかに、日本では書写教育がベースになっているので。
金丸:ちなみに中塚さんは、筆順についてどう思いますか?
中塚:学校教育の筆順と書の世界の筆順は、ちょっと違うかもしれません。たとえば、中国の古典的な文字を書こうとすると、「昔覚えた筆順では絶対にこの線にはならない」ということがよくあります。それに、書道の「書」の字も、いろいろな筆順があります。
金丸:つまり、絶対的な正解があるわけじゃないんですね。
中塚:一概に言えないので難しいのですが、ひとつの指針というか、「筆順通りに書くと、書きやすいよ」ということが本当に伝えたいことではないかと。だから、筆順が違うからといって、間違いだと減点するのは残念だなと思います。
金丸:私には無駄なエネルギーを費やしているように思えます。小学校や中学校の音楽、書道といった時間は、相対比較や減点主義で評価するのではなく、楽しみ方を教えるべきです。そうすれば、子どもたちは美術や書道と一生付き合っていけるじゃないですか。
中塚:楽しかったら、失敗しても乗り越えていけますからね。
金丸:せっかく芽が出たのに、「芽のかたちが悪い」と言うのが、日本の芸術教育なのではないかと。アメリカのニューオーリンズはジャズ発祥の地とされていますが、ジャズ教室に通ったわけでも、特別な教育を受けたわけでもない普通の人が、すごくいい演奏をする。幼い頃から周りに音楽があふれていて、ピアノもすぐ触れるところにある。しかも弾いたら楽しいから、どんどん好きになっていく。そういう好循環を日本でも生めるといいのですが。
中塚:書道教室で楽しく教えている先生もたくさんいらっしゃいますが、もっといろいろな角度から興味を持つきっかけがあるといいですね。私自身、書だけではなく、美術や歴史、海外の文化などを同時に吸収することで、興味の幅がすごく広がりましたから。
金丸:歴史も「何年にこんな事件があった」とピンポイントで教えるのか、大きな歴史の流れのなかでアートと絡めて教えるのかによって、「もっと知りたい、もっと学びたい」という意欲が相当変わってくると思うんです。
中塚:時代背景を知って、「あ、だからこういう芸術が生まれたんだ」とわかると、すごく楽しいですからね。そういう場が増えてほしいです。
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