芸能関係者からの信頼と人脈をある程度勝ち得た私は、次のアクションを起こした。
「最近好きな俳優さんがいるんです。遠野雄介っていう人なんですけど…」
吉沢の同世代の友人で、飲み会に呼ぶハードルが低いと噂されている“遊び人”の俳優・遠野。まずは、彼を紹介してもらうように動いた。
1ヵ月後。狙い通り、遠野とはすんなりと繋がることができた。
「君、俺のファンなんだって?ごめんだけど、俺セクシーなお姉さまが好きなんだよねぇ」
もちろん、予めそのことも知っていた。万が一遠野に持ち帰られてしまうようなことがあっては、吉沢と繋がりにくくなるので好都合だ。
しかし、遠野とはしっかりと友人関係を続けつつ、彼の界隈に入り込んでいく。
そして…。
「あ、吉沢です。はじめまして」
遠野と知り合ってから約7ヵ月後の2020年2月、ようやく吉沢敦に出会うことができた。
ここに至るまで、自分から吉沢の名前は一切出していない。しかし、遠野が会話の中で度々あげる吉沢との話は絶対に聞き逃さなかった。
そこから吉沢と遠野の行きつけを探り、「私もそのバーに行きたい」と言って出入りを続けた。そして、いつ彼と出会っても良いように、そのバーに行くときは毎回ヘアメイクや服装にも気合を入れた。
それが、今日やっと功を奏し、自然な流れで彼を紹介してもらうことができた。
逸る気持ちを抑え、初日はあまり会話を交わさないように気を付けた。一緒に飲んだメンバーでグループラインが作られたが、個人にメッセージは飛ばさなかった。
警戒心の強い彼ら芸能人には、これくらい興味がない素振りを見せないとすぐにシャットアウトされてしまう。
そして、吉沢と出会ってから約2週間後……。
ついに個人LINEで連絡を取るべき時がやってきた。
『遠野さんと、私の友達とこの前のバーで飲んでるんですけど、吉沢さんも来ませんか?』
あくまで、みんなでいるときに、さりげなく個人LINEを送るきっかけを作った。メッセージを送ってから2時間後の深夜2時過ぎ、彼はコソコソとやってきた。
BALENCIAGAのキャップを目深に被り、黒いマスクでほぼ顔は覆われているが、それでも隠し切れないオーラを全身にまとっていた。
―わざわざ来てくれたわけだし、悪くは思われてなさそう…。今日、一気に勝負をかけてみようかな。
「前回、全くお話しできなかったから…今日は是非と思って声かけちゃいました」
彼の隣をさりげなくキープし、片側の髪を耳にかけ、ティファニーのドロップピアスを揺らした。
「吉沢さん、オンラインゲームが好きだって聞いたんですけど…今度一緒にプレイしませんか?」
芸能界きってのゲーマーだという噂の彼は、一緒にゲームをしてくれる子がタイプだと過去のインタビューで話していた。
ゲームなんてほぼ触れたことのない私だが、彼と共通の話題を作るために数ヵ月間やりこんだ。その知識を惜しげもなく披露する。
「女の子で、ここまでゲームの話で盛り上がれる子初めて!フレンド登録したんで、今度絶対一緒にやりましょうね」
「私なんかで良ければ」と柔らかく微笑みつつ、心の中で盛大にガッツポーズをした。
そこからは、オンラインゲーム上でよく会話をした。外出自粛ムードが高まっていた時期ということも相まって、吉沢との距離はあっという間に縮まった。
「今ちょっと酔っぱらってて、ベッドの上でゲームしてます。私、お酒飲むとすぐ顔が赤くなっちゃうんですよ」
自分がどんな状態でゲームをしているか、彼に想像させるよう仕向ける。彼も次第に、自分のプライベートを話してくれるようになった。
一緒にオンラインゲームをやるようになって3ヵ月後。
自粛要請が解除されたこともあり「せっかくだし顔を見て話したい」と遂に食事に誘われた。
散々オンラインで会話をしていたから、実際に会っても緊張せず話すことができた。くだらないことで笑い合ったり、時には彼の真剣な演技論を聞いたり。
会うたびに次の約束をし、3回ほど2人で食事をした。もちろん、細心の注意を払い路上を2人で歩くことは一切しなかった。付き合う前に週刊誌に撮られでもしたら、これまでの計画がすべて台無しになってしまうから。
そして、ついに初めて彼の家に上がった日。
「真子と一緒にいると楽しいし、なんか癒されるなって思った。俺と付き合って欲しい」
“吉沢敦と付き合う”という目標を立ててから、約1年後のことだった。
◆
タクシーで、彼の待つウェスティンへ向かう。
最近ドラマの撮影が忙しくて睡眠時間をあまり確保できていない彼が、私と会う時間を作ってくれていることが本当に嬉しい。
色々な制約がある私たちの付き合いは、世の中の女性にとってあまり羨ましいものではないのかもしれない。
でも、その辺のつまらない男とありきたりな恋愛をするより、ずっと刺激的で幸せな毎日だ。
ウェスティンホテルが見えてきた頃。スマホに届いたキュレーションメディアのニュース通知が目に入る。
『吉沢敦ロングインタビュー』という見出しが気になり記事を開くと、彼の端正な横顔がトップに大きく載っていた。
「かっこいいなぁ…」
思わず漏れ出た言葉に、私は小さく笑った。
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この記事へのコメント
こうして考えると、松◯聖◯さんって凄い人だったんですね。福岡県に住んでいた時から、「◯◯(某芸能人)と結婚する!」と周りに宣言して、自らもスターになり、その人と本当に熱愛を果たすんですから……。別れた後、互いに別の人と3回結婚するというオチが付きますが😅
前に1話か2話くらいで終わった、似たような連載があったね。今度は途中で終わらないと良いなぁ。