報道ガールの恋愛事件簿 Vol.10

「君の名前ググったら、動画がたくさん出てきた…」別れた男が、女を呼び出した本当の理由

—ありのままの自分を、好きな男に知られたくない。だってきっと、また引かれてしまうから…。

高杉えりか、25歳。プライベートはほぼ皆無、男社会に揉まれ、明け方から深夜まで拘束される報道記者。しかも担当は、血なまぐさい事件ばかりだ。

だけど、恋愛も結婚もしたい。そんな普通の女の子としての人生も願う彼女は、幸せを手に入れられるのかー?

◆これまでのあらすじ

えりかは、殺人事件の特ダネをゲットし、必死で取材を続けている。

創太にも、ついに職業を打ち明けた。そんなある日、トラウマの原因となった元カレから「金を返したいから会いたい」と連絡が来て…。

▶前回:これでもまだ、私を女として見てくれる…?デートの夜、素性を明かした女に男が取った行動


えりかは店の前で、ごくりと生唾を飲んだ。

手入れの行き届いた木々が、美しくライトアップされている。Google Mapを2本の指で拡大するが、間違いない。3時間前、「今日ここね」とだけ添えられ、慎二から送られてきた住所。

『この前空港で置いて行ったお金、もらいすぎたから返したいんだけど会えない?』

今日の約束は、偶然再会した元カレの無遠慮な言葉に思わず叩きつけた5千円札のおつりを、なぜか今更返してもらう名目で呼び出されたのだが…。

「何を考えてるんだ…?」

コットン100%のTシャツワンピを着てきてしまったことを、後悔してももう遅い。えりかは小さく息を吐いて意を決し、『オテル・ドゥ・ミクニ』の扉を開けた。

「よお」

ギャルソンに案内された席に座っていた慎二は、軽く手を挙げた。

「よお、じゃないんですけど」

えりかは恨めしげに言いながら、周囲の様子を窺った。

「お前、なんだよその格好」
「フレンチ行くって聞いてたらちゃんとワンピース着てきたよ」

まさかこんなところ予約するなんて思わないじゃん、とぼやきながらナプキンを膝に広げる。これでは、まるでデートではないか。

ーフレンチ行くって聞いてたら来なかったよ。

口には出さずとも、自然と眉間にシワが寄る。

慎二はドリンクメニューを広げながら、ちらりとえりかを盗み見た。その表情の険しさに、すぐに目線をメニューに戻し、「シャンパンで良い?」と軽い調子で言った。



「…で、なんでこんな素敵なお店なの?」

ナイフが要らないほどに柔らかな黒毛和牛のフィレステーキをカットしながら、えりかは尋ねた。それまで当たり障りのない雑談を紡いでいた慎二が、急に押し黙る。

「いや。蒸し返すわけじゃないんだけど、この前空港で会った時の別れ際、最悪だったし。何ならもう会わないだろうなくらいのこと思ってたから」

肉を口に運ぶと、とろけるような旨味が広がった。幸せホルモン出てるなあ、と恍惚感に浸る。すると慎二がおもむろに、ボソッと言った。

「…悪かったよ」

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