報道ガールの恋愛事件簿 Vol.8

デートに1時間遅刻し、“ありえない姿”で登場した女。彼女を見るなり、男が放った一言とは

—ありのままの自分を、好きな男に知られたくない。だってきっと、また引かれてしまうから…。

高杉えりか、25歳。プライベートはほぼ皆無、男社会に揉まれ、明け方から深夜まで拘束される報道記者。しかも担当は、血なまぐさい事件ばかりだ。

だけど、恋愛も結婚もしたい。そんな普通の女の子としての人生も願う彼女は、幸せを手に入れられるのかー?

◆これまでのあらすじ

えりかは、好きな男性・創太に、職業をまだ打ち明けられていない。元カレから浮気された過去に苦しんでいたが、ついにある決心をして…。

▶前回:「私みたいな女と付き合える!?」食事中、男に迫った女。彼がすかさず返した答えとは…


走り続けていた車がぴたりと停車し、弾みの振動で目が覚めたえりかは、ゆっくりと上半身を起こした。

ハイヤーの後部座席で体を丸めていたから、腰や背中がズンと重く痛む。コンタクトレンズが乾いて張りつく目をこすり、スマホの画面を見ると、時刻は午前8時半。

「高杉さん、もうすぐ着きますよ」

おとといえりかは、出張帰りにそのまま徹夜で張り込みをした。日中は普通に働き、当然のように夜討ちもした。

明け方に自分のマンションに帰ったときには、すでに朝駆けのためのハイヤーが待ち構えていた。もう48時間近くベッドで眠っていない。

「もうすぐ着いちゃいますか…」

寝不足で痛む頭を押さえながら、呻くように呟いた。急いでシャワーは浴びたものの、なぜか体中がべたべたする。

スマホのインカメを覗くと、くすんだすっぴんの肌にげっそりとやつれた顔が浮かび上がった。見るんじゃなかった、と画面をすぐに暗転させる。

さすがの本郷キャップも、えりかの勤務時間が破綻していることは把握している。だが今日は、それでも頑張らなければいけない日なのだ。

「うわ、すごいな…」

ドライバーの声に、えりかは顔を上げて窓の外を見た。

高くそびえ立つ脚立の上から構えられた、スチールカメラ、ぎゅうぎゅうと押し合うようにして並ぶENGカメラ、交差するように掲げられるガンマイク。

練馬警察署の裏口に、無数のマスコミがひしめき合っていた。

「送検だから、気合入ってますよ。“絶対、顔撮ってやろう”って」

えりかは両手で頬を軽く叩き、よし、と息を吐く。ハイヤーから降りると、むわっとした熱気に包まれた。

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