2020.08.25
2人の花嫁 Vol.2
◆
「打ち合わせ、どうだった?」
日曜日。紗理奈とアヤが向かい合うのは『TRUNK(KITCHEN)』のテラス席。
友人の紹介で出会ってから距離を縮めた2人は、定期的に連絡を取りあって近況報告をしていた。
テーブルに置かれたラムサドルローストのランチセットを写真に収めながら、アヤの質問に答える。
「決めることが多くて疲れちゃった。次回は料理やドリンクも決めなきゃだし、追いつかないよ~」
「料理やドリンクは特にゲストの満足度にも直結するし、ランクの上下が目に見えて分かっちゃうから、あんまり妥協したくないよね」
アヤの言葉に、そうなの?と紗理奈は驚く。
「ファーストドリンクはシャンパンじゃないとケチってると思われるって聞いたことある。あと料理も、使われてる食材で何となくどのランクにしたか分かるみたい」
紗理奈は招待する予定の友人たちの顔を思い浮かべる。パーティやら食事会やらでやたらと場慣れしている女達だ。下手にケチると陰でなにか言われそうな気がする。
「うちは夫が7コ上なのもあって、結婚式慣れしているゲストが多いから、料理は1番良いのにしたよ」
さらりと言うアヤだったが、1番上と下のコースは、差額が1万ほどあったはずだ。仮に30人呼んだとしても、料理だけで30万もアップすることになる。
アヤの話によると、高砂に着けるライトや、ケーキナイフに付ける飾りですらオプション扱いだし、ムービーに好きな音楽を入れ込んで流すだけでもISUM申請料金がかかるらしい。
ーどこまでも追加料金がかかるのね。ほんとお金がいくらあっても足りない…。
今後も夫と揉めることが増えそうだと思うと、紗理奈は憂鬱になってくる。
「ていうか、紗理奈ちゃんって何人呼ぶか決めてる?」
ぼんやりそんなことを考えていると、アヤが別の話題を振ってきた。
「それ、私も悩んでたの。当初の予定よりだいぶ減らす予定だけど…」
「…私も、会社の人を呼ぶのやめようかと思ってる」
「結婚式は自粛要請の対象外ってどこかの知事が言ってたけど、開催する以上、どうしてもリスクは発生するもんね…」
2020年秋婚同士の不安はやはり共通しているようだ。どんなに考えても何が正解なのか答えは見つからない。
「紗理奈ちゃんは、遠方の親族とかいるの?」
アヤの問いに、胸が急にザワザワしてくる。
「実家は、静岡だよ。そんなに遠くはないけど、今の状態だと東京に来てもらうのは結構不安なんだよね」
その後のアヤの一言で紗理奈のテンションはさらに下がってしまうことになる。
「そうだよね、不安だよね。静岡のどのあたりなの?」
―出た、この質問。
仕方なく、住んでいる所からわりと近い地名を言ってみるものの、案の定アヤは小首を傾げ「へー、1回行ってみたいな」と言っただけだった。
―ほら、やっぱり知らないじゃん…そういう反応するなら最初から聞かないでよ。
『1回行ってみたい』という言葉に、どこか馬鹿にしたニュアンスを感じ取ってしまうのは、自分がひねくれているからだろうか。
心の中に渦巻き始めた感情が、あまり良い類のものではないという事を、この時紗理奈はハッキリ自覚したのだった。
この記事で紹介したお店
トランク(キッチン)/トランクホテル
それにしても、妻が帰宅しても顔も上げない夫なんて先が思いやられるよ‥‥
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