コンパス〜28歳、人生の羅針盤〜 Vol.2

「まだ若いのにもったいない…」23歳で結婚し、地方で暮らす妻。果たして正解だったのか?

誰にだって、人生の中で選択を迫られる瞬間があるだろう。そんなとき、何を軸にして進むべき道を選ぶ?

登場するのは、一見輝かしい人生を送る28歳の女たち。彼女たちには、迷ったときの道しるべとする「人生の羅針盤(コンパス)」があったー。

心に闇を抱えた女たちは、どんなコンパスを頼りに、逞しくしたたかに生き延びるのか。

先週は、「もっと美しくなれるかどうか」というコンパスの女だった。

今回登場するのは28歳の専業主婦、渡沼すみれ。夫の転勤先・新潟で、2歳の娘と夫と3人で暮らす、すみれの胸の内は…。


土曜日の昼。『フレンチキッチン』のテラス席で、すみれは久しぶりにやってきた都心の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

「すみれ、お待たせ〜」

数年ぶりに会う大学時代の親友・愛莉が、手を振りながらこちらに向かってくる。

「すみれとこうやってランチするの、本当に久々ね」
「そうよね、娘が生まれてからはつきっきりで、今日だってやっと親に預けてきたのよ」

結婚を機に新潟に引っ越し、子供が生まれてからというもの、ばっちりとメイクをして出かけることも、小洒落たお店で食事をする機会もあまりない。

実家に帰省したついでに、こうして愛莉と会う約束をしたのだが、すみれはどこかソワソワしていた。

昔は日常だった女友達とのランチも、いまのすみれにとってはちょっとしたイベントなのだ。

一方で愛莉は、東京でバリバリ働いているだけあって、都会のおしゃれなテラス席に馴染んでいるし、美しさにもさらに磨きがかかったように見える。

シャネルのサングラスを外しながら椅子に座った愛莉は、すみれに向かってニッコリ微笑んだ。

「すみれは順調に“ママ”やってる?」
「初めての子育て、わからないことだらけ。最近の専らの悩みは、娘を2年と3年保育どちらにするかね」
「うーん、すみれが悩んだときの答えは…。“あの人”が知ってるんじゃない?」

愛莉がいたずらっぽくにやりと笑い、こちらを見る。

「すみれが新潟行きを決めた理由も、確か“あの人”だったよね…」

人生の岐路に立たされた時、いつも頭をよぎる人物。すみれは、4年前の出来事を思い返した。

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