スパイシー・デイズ Vol.1

スパイシー・デイズ:「30歳になってフリーだったら結婚しよう」男女が交わした約束の結末

スパイシー・デイズ。

それは、自分を見失うほどの恋に苦しんだ日や、
仕事のミスが悔しくて涙を流した夜、
もう来ないとわかっているはずなのに返事を待つ、あの瞬間。

ほろ苦いように感じるけれど、
スパイスのように人生の味つけをしてくれる。

今回紹介する彼女が過ごすのは、どんなスパイシーデイズ...?


日曜夜、香織は缶ビールを片手に、携帯の画面を眺める。

通知で出て来た、一年前の今日の写真には、大口を開けて笑う涼太の横顔が写し出されている。

-バカだったなぁ。

香織は小さく鼻で笑うと、残ったビールを飲み干した。



2019年5月17日。

春の暖かな風が、ほろ酔い気分の涼太と香織の頬を撫でる。

「こうやってのんびり飲む華金も悪くないねぇ〜」

噛みしめるように話す涼太を、香織は横目で眺める。

「本当いい華金!どうせ涼太は暇だろうなぁって思って。声かけてよかった」

意地悪そうな笑顔を見せる香織に、涼太は「失礼な」とむくれながら軽く肩を小突いてくる。

2人がひとしきり笑いあった後、息をつくようにして香織は言った。

「ねぇ。私たち、もう社会人8年目なんだね」

「入社式で初めて香織と話したの、7年前かぁ。あっという間だな」

昔を懐かしむような表情をして遠くを見つめる涼太に、香織は口を尖らせて拗ねたように話す。

「相変わらずお互い恋人できないね」

「いや、俺はあえて作らないだけ。作ろうと思えばできる。最近デートしてる子だっているし」

自信に満ちた表情の涼太に、悔しくなった香織は「そうですか」と短く返事をした。

「あ〜、このまま彼氏できなかったらどうしよう」

眉毛をハの字にさせながら忙しなく身体を揺らし始めた香織を見て、涼太は大きな口を開けて笑う。

「じゃあさ、30歳になってもお互い恋人がいなかったら結婚しようぜ」

「いいね、それ。名案!」

ポンっと手を叩くと、香織は涼太と目を合わせて笑った。

30歳まで残り半年を切った、暖かな5月の夜だった。

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