
スパイシー・デイズ:「30歳になってフリーだったら結婚しよう」男女が交わした約束の結末
2019年10月。
-涼太:ごめん。今週末、夕方まででもいい?夜予定入っちゃった-
-香織:1日中ひまだからいいよ〜夜の予定って何?-
-涼太:会った時に話すわ-
空は真っ青に晴れていて、金木犀の香りが漂う日だった。
カフェのテーブルで向かいに座る涼太は、口元が緩むのを抑えられないようにニタニタと笑っている。
「何をそんなにワクワクしてるの」
「前に話した女の子いたじゃん?今日その子とデートなんだ」
「へぇ〜まぁどうせいつもの『デートしたらこんなひどい子だった』でしょ」
「いや、今回は違う。顔もめちゃくちゃタイプだし、性格も素直でさ、何でも顔に出ちゃうのが可愛いのよ」
「はいはい」と興味がなさそうにそっけない返事をしながら、香織は目の前のレモンティーをマドラーで混ぜる。
「香織も、ちょっとくらい素直になってみたらすぐ彼氏できるんじゃないの?せっかくモテるのに、勿体ないよ」
「うるさいなぁ、心配されなくても私だって彼氏の一人くらい出来ます」
不機嫌そうに涼太を睨みつけると、香織は携帯を手に取ってInstagramを開き、あてもなくスクロールし続けた。
-どうせデート終わったら、いつもみたいに「やっぱりダメかも」って連絡してくるんでしょ。
香織はそう自分に言い聞かせていたが、涼太の言うように、何となくいつもとは何かが違う気がしていた。
その夜、香織はぼんやりとPCの画面を眺めていた。見たかったはずの映画なのに、どうも携帯が気になって、全く内容が頭に入ってこない。
-今頃、涼太はデート中かぁ。
考えるだけで胸の奥がむず痒くなるのを紛らわそうと、映画を止めてインスタを開くが、とても見る気にならない。かわりにTwitterを開くが、やはり内容が頭に入ってこない。
-夜ご飯でも食べるか。
思い立ったように勢いよくソファから立ち上がり、香織は冷蔵庫を開けると、缶ビールとテイクアウトの「京橋屋カレー」を取り出した。
-カレー温めている間に、ちょっと飲んじゃおう。
そう思って軽く飲んだつもりだった。
30分後、まだ涼太からの電話は来ない。携帯の電話帳を眺めながら、香織は発信ボタンをじっと睨みつけていた。
-酔ってるし、いっか!
そう自分に言い聞かせると、力強く発信ボタンをタップした。
この記事へのコメント
8年も一緒にいて友達ならそれ以上の進展ってなかなかない気がする。
特に美人とも書いてないし。
お互い憎からず思ってるのは間違いないし、これが3年後とかだったらその頃どうなってるかわからないし本気にはしないかもしれないけど。