
スパイシー・デイズ:「30歳になってフリーだったら結婚しよう」男女が交わした約束の結末
「あぁ...」
電話が切れた途端、「彼女ができた」と言う涼太のその言葉が急に現実味を帯びて、思わず香織は声を漏らし、崩れるようにソファに倒れ、顔を埋めた。
-こっちは約束期待してたのに。バカみたいじゃん。
約束も誕生日も覚えていてくれた涼太に勝手に舞い上がっていた自分が滑稽に感じて、香織はソファに伏せたまま、ただただ涙を流していた。
-あぁ、どうしてもっと早く言えなかったんだろう。どうしてもっと素直になれなかったんだろう。私もすぐに顔に出るくらい素直だったら涼太に好きになってもらえてたのかな。
急に様々な後悔が押し寄せてきて苦しくなった香織は、息継ぎをするように顔をあげた。
目の前には食べかけのカレーがスパイスの匂いを漂わせている。しばらくカレーを見つめると香織はスプーンをそっと手に取り、カレーを口に運ぶ。
カルダモンやドライバジル。口の中いっぱいに広がる味に、香織は何故か気持ちが落ち着いた。
-涼太の言う通りなのかもしれない。お酒の力を借りなければいけなかった私は、卑怯者なんだ。
香織がぼーっと携帯を眺めていると、涼太からLINEが届く。
-涼太:さっきは卑怯とか言ってごめん。気持ち言ってくれて、ありがとう-
涼太からのLINEを見ながら、また涙が溢れたが、香織は姿勢を正すと大きく息を吸い込んだ。
-もう30歳。涼太だって素直になってくれたんだ。私も、強くならないと。
そう自分に言い聞かせると、香織はニコッと口角を上げてテキストを打つ。
-香織:ううん。こちらこそごめん。悔しいけど、おめでとう。-
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この記事へのコメント
8年も一緒にいて友達ならそれ以上の進展ってなかなかない気がする。
特に美人とも書いてないし。
お互い憎からず思ってるのは間違いないし、これが3年後とかだったらその頃どうなってるかわからないし本気にはしないかもしれないけど。