
スパイシー・デイズ:「30歳になってフリーだったら結婚しよう」男女が交わした約束の結末
5コール鳴っても出ない涼太に苛立ち始めた時だった。
「もしもし?」
「涼太〜!遅いよ〜!デート終わった?どうだった?」
「いい感じだったよ。明日仕事って言ってたから早めに解散した」
「ふぅ〜ん、それはそれは〜よかったねぇ」
涼太の返事に満足したように返事をすると、急にその状況が可笑しくなり「ふふっ」と香織は笑った。
「ご機嫌だな、どうした?」
「まぁ色々あってね。そういえばさぁ、私もうすぐ誕生日なんだけど、お祝いしてよね」
「そうか、再来週だもんね。ちゃんとプレゼント買うよ」
涼太が誕生日を覚えていたことが嬉しくなり思わず笑顔になりながら、香織はふと涼太との約束を思い出した。
「ねぇ、あの約束覚えてる?」
「どれ?」
「え〜!30歳になるまでに彼氏できなかったら、ってやつだよ。まさか忘れたの?」
約束をすぐに思い出してもらえなかったことで不機嫌になる香織をなだめるように、「あぁ、覚えてる覚えてる」と涼太が返事をする。
「もう30歳だよ、やばすぎ」
「そうだな」
香織に対して涼太の返事はそっけなく、しばらく2人の間に沈黙が流れた。
-なんで黙るのよ。
酔いが回っている自分に対して、冷静な涼太に無性にイラついた香織は、すぅっと大きく深呼吸をすると口を開いた。
「ねぇ、私、涼太のこと好きだよ」
「...」
香織の意を決した告白にもかかわらず、電話の向こうからは風の音しか聞こえてこない。
「もしも〜し、聞こえてる?」
「なんか、酔ってる?」
涼太の声は、さっきまでと打って変わって、冷たい。「いや」と否定しようとする香織に、すかさず涼太は声を被せてくる。
「嘘つけ、声が酔ってる時の声だよ」
「じゃあ、ちょっとだけ...」
「酔った勢いでそんなこと言うなよ。卑怯だぞ」
明らかに涼太の声のトーンが低くなったのを感じ、香織は焦って弁解をする。
「ごめん、でも本当に...」
「それに、俺もう彼女できた」
「え?」
思わず、耳を疑いたくなるような言葉だった。
「ごめん。さっき告白して、OKもらえたんだ」
今度はハッキリとした涼太の言葉を聞き、香織はハハハと笑い始めた。
「何だ!ウケる。冗談だよ、冗談。てか、付き合ったんだね、よかったじゃん!5年ぶりの彼女、めでたいなぁ」
必死に絞り出した言葉だったが、香織は今にも泣きそうな気持ちだった。
「ごめん、終電来たからもう乗るね」
「うん」
「じゃ、また」
そう言うと、涼太は電話を切った。
この記事へのコメント
8年も一緒にいて友達ならそれ以上の進展ってなかなかない気がする。
特に美人とも書いてないし。
お互い憎からず思ってるのは間違いないし、これが3年後とかだったらその頃どうなってるかわからないし本気にはしないかもしれないけど。