急募:僕の嫁 Vol.2

「この男、不思議ちゃん…?」敏腕結婚カウンセラーが見抜いた、男の深層心理

敏腕カウンセラーの目利き


「この場で申し込みます。よろしくお願いします」

カウンセリングを終えた進太郎は、室井に告げた。

「ありがとうございます。では、入会にあたり必要な書類ですが…」

説明を始めた室井に、進太郎はクリアファイルに入れた書類を差し出した。

「本人確認書類、源泉徴収票、独身証明書、それから、卒業証書のコピーです。念のため、戸籍謄本も持って来ました」

カウンセリングまでの数日間、必要書類を調べて事前に用意してきたのだ。

「あ、ありがとうございます…。では、申込用紙を取って来ますね」

室井は慌てた様子で書類を取りに小走りで出て行った。

部屋に1人残された進太郎は、自分の左手薬指を眺めた。1年後、ここには指輪がはめられているはず。

「これで結婚出来るぞ〜!」

カウンセリングが終わったら、銀座の宝飾店にでも立ち寄って指輪の相場でも確認して帰ろう。

「あ、でもお腹空いたから先に軽く食事でもしてから行こうかな」

そんなことを考えながら、室井を待った。


−仕事が忙しくて出会いがなかったのかしら…?

室井は、申し込み用紙に記入する進太郎の様子を注意深く観察していた。

学歴と収入ともに文句なし。さらに、爽やかなルックスで、まだ若い。

唐突に「左右対称の漢字の名前は縁起が良い」と発したことから、不思議ちゃん系であることは予想されるが、物腰は柔らかいし、言葉遣いも丁寧だ。

理想の相手像も、“価値観が合う人”と、一般的な回答だ。

普通に考えれば、女性からの引き合いも殺到することが予想されるだろう。

−でも…。

どういうわけか、すぐに成婚するだろう、とは思わなかった。むしろ、結構手のかかる、大変なクライアントなのではないかと。

嫌な予感がする。直感的にそう感じたのだ。

そんなことを考えていると、進太郎が「これで問題ないでしょうか」と、声をかけてきた。

ざっと内容を確認した室井は、にこやかに頷いた。

「ご記入ありがとうございます。以上ですが、質問等ございますか?」

「うーん、そうだなぁ」

それだけ言うと、進太郎は虚空を見つめながら頬杖をついた。どうやら彼には、考え事をする時に首を右に傾けながら、虚空を見つめる癖があるようだ。

その間、室井は書類を整えながら彼が口を開くのを待つ。

そろそろ良いだろうか、質問は後でメールでもしてくれ…と思っていると、目をキラキラさせた進太郎が話しかけてきた。

「室井さんって、“運命”を信じますか?」

−はっ…!?そういうこと聞いたんじゃないんだけど。やっぱり、不思議ちゃん系だわ。

事務的な質問をしたつもりだったが、進太郎には伝わっていなかったらしい。

「ええ、信じています。曽根さんにもきっと、“運命の人”がいるはずです。一緒に頑張りましょう!」

室井が半ば強引に会話を終了させると、進太郎は「そうですよね。早く出会えると良いな」と、呟いた。

「ありがとうございました!」

進太郎を見送った室井は、すぐさま彼の情報を登録手続きに回した。同時に、カウンセリングの記録作成に取り掛かる。

−マイナスポイントは全くないんだけど…。何だろう、この違和感。

どうにも表現し難い進太郎の様子を、書いては消して、書いては消して、を繰り返した。


▶︎Next:4月21日 火曜公開予定
ついにファーストコンタクト。運命の人に会えると楽しみにしていた進太郎だが、現実はそう甘くなかった…?

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この記事へのコメント

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No Name
>"ビビビ”と、雷に打たれたような感覚が身体中を駆け巡り、そのまま恋に落ちるのだ。

これで松田聖子は失敗したやないかい。
若い人は知らんだろうけど笑。
2020/04/14 05:4799+返信6件
No Name
やっと会えたねってシャルルドゴール空港の辻仁成じゃないか!
ロマンチストというか結婚に夢見すぎ。
2020/04/14 05:5995返信2件
No Name
条件がない が1番理想が高いとも気付かずに……
2020/04/14 06:0592返信3件
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